●睡眠時無呼吸症候群と歯ぎしり※1、2、3
睡眠時無呼吸症候群を発症すると、寝ているときに呼吸が止まるため、脳は活性化され睡眠が浅くなります。また、歯ぎしりは睡眠が浅くなるとおきるため、睡眠時無呼吸症候群と歯ぎしりは関連があるとされています。
歯ぎしりの多くが睡眠中の無呼吸や低呼吸とともに観察され、睡眠中の無呼吸や低呼吸が増加するにつれて、歯ぎしりの頻度が増加する傾向にあります。睡眠時無呼吸症候群の人の大半が、歯ぎしりをしているとされています。
睡眠中の歯ぎしりを引きおこす要因として、精神的ストレス、カフェインやアルコールの摂取、喫煙などがありますが、いびきや睡眠時無呼吸症候群も歯ぎしりを引きおこす大きな要因となっています。
イギリス、ドイツ、イタリアで13057人を対象におこなった大規模な調査では、精神的ストレスや喫煙が睡眠中の歯ぎしりを引きおこすリスクが1.3倍(オッズ比)だったのに対し、大きないびきは1.4倍(オッズ比)、睡眠時無呼吸症候群の人は1.8倍(オッズ比)も歯ぎしりを引きおこすリスクが高いという結果となりました。
睡眠時無呼吸症候群は自覚症状がないことが多く、気付かず治療を受けていない人がほとんどです。睡眠中の歯ぎしりもまた無意識にすることが多く、また日によって変動が大きいため、気付いていない人がほとんどです。
睡眠時無呼吸症候群、歯ぎしりは身体に様々な悪影響を及ぼすので注意が必要です。
歯ぎしりを引きおこすリスク(オッズ比)※1
SAS:睡眠時無呼吸症候群患者 昼間の眠気:中等度の昼間の眠気がある人 喫煙:1日20本以上タバコを吸う人 ストレス:日常生活において大きなストレスを感じている人 アルコール:毎日グラス3杯以上のアルコールを飲む習慣のある人(大量のアルコールを飲む人)
関連するページ 睡眠のメカニズム いびきと睡眠時無呼吸症候群 歯ぎしり
●睡眠時無呼吸症候群と歯ぎしり防止装置(ナイトガード)※4
睡眠中の歯ぎしりを防止する装置「ナイトガード(歯ぎしり用マウスピース)」は、歯ぎしりの治療では最も使用されます。ところが、ナイトガードの種類によっては、下あごが後方にわずかに押し下げられ、気道が狭くなり、いびきや睡眠時無呼吸症候群の症状が悪化することがあります。
一例として、カナダの研究者らがおこなった調査では、睡眠時無呼吸症候群の人がナイトガードを使用したところ、無呼吸の症状が30%も悪化したという結果となりました。
ナイトガードの使用にあたっては、専門の歯科医師により気道やあごの形態、いびきや睡眠時無呼吸症候群の症状、睡眠薬などの薬の服用等を確認してもらい、適切なナイトガードを選択する必要があります。大きないびきをかく人、睡眠時無呼吸症候群の人は、ナイトガードは使用しないほうが無難です。
ナイトガード(左) 歯軋りによる歯の摩耗(右)
関連するページ 歯ぎしりの治療方法
●いびき防止装置(スリープスプリント)と歯ぎしり※5、6
睡眠中の無呼吸や低呼吸が増加するにつれて、歯ぎしりの頻度も増加する傾向にあります。スリープスプリント(いびき・無呼吸防止用マウスピース)は、いびきや睡眠時無呼吸症候群の症状を改善するだけでなく、歯ぎしりを防止する効果も認められています。
一例として、カナダの研究者がおこなった調査では、スリープスプリントの使用によって睡眠中の歯ぎしりが50~83%も低下しました。いびき、睡眠時無呼吸症候群と歯ぎしりを治したい場合は、スリープスプリントを使用するのも一つの方法です。
イスラエルの研究者の調査などにより、CPAP(いびき、無呼吸を抑える装置)の使用によっても、歯ぎしりが抑えられることも明らかにされています。
スリープスプリント(左:上下一体型、右:上下分離型)
関連するページ スリープスプリント CPAPについて
●睡眠時無呼吸症候群と下顎隆起※7
下顎隆起(かがくりゅうき)とは、下あごの歯の内側にできる、円形の骨の隆起のこといいます。痛みなどの自覚症状はなく、長期間かけて少しずつ大きくなります。基本的に治療の必要はなく、歯ぎしりをしている人に多くみられます。
下顎隆起が大きくなると、舌は後方に押しやられ、舌により気道は狭められて、睡眠時無呼吸症候群発症の一因となることがあります。下顎隆起を手術により切除し、睡眠時無呼吸症候群の症状が改善したとの研究報告もあります。
下顎隆起(矢印の部分)
●睡眠時無呼吸症候群と歯ぎしりとの関係(まとめ)
大きないびきをかく人、睡眠時無呼吸症候群の人は、歯ぎしりをしている割合が高い。
睡眠時無呼吸症候群の人が歯ぎしり用マウスピースを使用すると、睡眠時無呼吸症候群の症状が悪化することがある。
スリープスプリント(いびき・無呼吸用マウスピース)の使用により、いびきや無呼吸の症状が軽減されるだけでなく、歯ぎしりも軽減される。
※1 Ohayon MM, Li KK, Guilleminault C:Risk factors for sleep bruxism in the
general population Chest 119(1):53-61,2001 ※2 Takafumi
Kato:Sleep bruxism and its relation to obstructive sleep apnea–hypopnea syndrome Sleep and Biological Rhythms, 2:1-15,2004 ※3 Sjöholm T.T,LOWE AA,Miyamoto K,Fleetham JA,Ryan CF:Sleep bruxism in patients
with sleep-disordered breathing Arch Oral Biol 45(10):889-96.2000 ※4 Gagnon Y, Mayer P, Morisson F, Rompré PH, Lavigne GJ. Aggravation of respiratory
disturbances by the use of an occlusal splint in apneic patients: a pilot
study. Int J Prosthodont17:447-453,2004 ※5 Landry ML, Rompré PH, Manzini C, Guitard F, de
Grandmont P, Lavigne GJ. Reduction of sleep bruxism using a mandibular advancement device: an experimental
controlled study. Int J Prosthodont;19(6):549-556.2006 ※6 Oksenberg A、Arons E Sleep
bruxism related to obstructive sleep apnea: the effect of continuous positive
airway pressure. Sleep Med. 3(6)513-515 2002 ※7 松下明日香ほか 下顎隆起が原因と考えられた閉塞型睡眠時無呼吸症候群の1例
日本口腔外科学会雑誌 56(9)524-527 2010
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