寝ている時や起きている時の歯ぎしり(食いしばりを含む)は、食事をしている時よりもずっと強い力が歯やあごにかかり、様々な影響を及ぼします。
誰でも歯ぎしりをすることがありますが、睡眠の妨げになるほか、確実に歯、歯肉、あごの関節を破壊します。歯が削れる、折れる、しみるなどの原困となることもあります。
●歯ぎしりの発生率※1
睡眠中の歯ぎしりの発生率は調査方法により異なりますが、子供では10〜20%、大人では10%前後、高齢者では5%以下とされています。子供は高い頻度で見られ、年齢が上がるにつれて減少する傾向にあります。男女の差はないとされています。
また、同じ人でも時期、全身の健康状態、生活環境、睡眠の質などによって歯ぎしりをしている時としていない時があります。歯ぎしりをしているにも関わらず、気付いていない人がほとんどです。
歯ぎしりで歯が痛むことも…
関連するページ 歯ぎしり Q&A
●歯ぎしりの病態※2
睡眠中の歯ぎしりの80%は浅いノンレム睡眠(第1、2段階)で発生し、10%前後がレム睡眠で発生します。また、ほとんどがノンレム睡眠からレム睡眠へ移行する期間で発生します。睡眠中の一時的な脳の覚醒に伴う現象と考えられています。
※レム睡眠 脳は起きていて、体は眠っている状態のこと。
※ノンレム睡眠 脳が眠っている状態のこと。浅い眠りから深い眠りの4段階に分類されます。
関連するページ 睡眠のメカニズム(レム睡眠とノンレム睡眠)
●歯ぎしりの種類
一般に「歯ぎしり」とは、口の中に食べ物がない状態で、睡眠中無意識のうちに上の歯と下の歯をこすり合わせて、キリキリという音を出すものをいいます。ほとんどの人は自分が歯ぎしりをしていることに気付きません。
歯ぎしりには、他にも無意識にただ強く歯をかみしめるものとか、上下の歯を小刻みに連続的にカチカチとかみ合わせるものもあります。
弱い力で歯を接触させる癖は「TCH(歯列接触癖)」といい、2011年頃からテレビや新聞などのマスメディアで報道され、多くの人に知られるようになりました。
ほとんどの人は自分が歯ぎしりをしていることに気付いていません
関連するページ 歯ぎしりの種類 TCH(歯列接触癖)
●歯ぎしりの原因
歯ぎしりの原因とされているものには以下があげられます。睡眠時無呼吸症候群、逆流性食道炎などの病気を原因としている場合は、病気の治療を優先させます。
1)癖、心因性、ストレスによるもの
精神的なストレス、悩みや潜在的な心配事があると、眠っているときに歯を食いしばらせて、ストレスを発散させることがあります。歯ぎしりをしている人の多くは、癖、心因性、ストレスが原因とされています。
大きなストレスは歯ぎしりの原因となります
2)病気によるもの
うつ病、
パニック障害、
パーキンソン病、
口顎ジストニア、過敏性腸症候群、
いびき症、睡眠時無呼吸症候群 、レム睡眠行動異常症、不眠症、
胃食道逆流症、
てんかん、
ダウン症、
脳性麻痺、レット症候群などの病気等にかかっている人は、歯ぎしりをしている割合が高いとされています。
関連するページ 睡眠時無呼吸症候群と歯ぎしり 歯ぎしりと胃食道逆流症
3)かみ合わせによるもの※3
以前は歯並びが悪かったり、かみ合わせが悪いと歯ぎしりがおきると考えられていましたが、現在は否定されつつあります。
関連するページ 歯ぎしりとかみ合わせ
4)薬の服用
うつ病の治療薬である選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI、商品名:パキシルほか)を服用すると歯ぎしりの症状を悪化させるほか、抗精神薬、制吐剤などの薬、麻薬も、睡眠中の歯ぎしりの原因となることがあります。
関連するページ うつ病 統合失調症 薬物依存症(シンナー、麻薬)
5)その他
遺伝、喫煙、飲酒、カフェイン、コカインなども、歯ぎしりの原因としてあげられています。
就寝前の飲酒、喫煙も歯ぎしりの原因となります
関連するページ タバコ
●歯ぎしりによっておこる障害
歯ぎしりは食事をしているときの何倍もの力がかかります。その結果、様々な障害を引きおこします。
1)歯
歯が削れる(磨耗)、折れる、欠ける、痛む、しみる(知覚過敏)、虫歯の発生など。
関連するページ 知覚過敏症
2)歯肉
食物がない状態で強い力が歯の根に加わるため、組織が引き伸ばしたり、圧迫されたりして、歯の周りの組織が血流障害をおこします。そして、歯肉が下がったり、歯を支える骨が溶けたり、歯がグラグラするなど、歯周病を進行させます。
関連するページ 歯周病 歯周病を悪化させる要因
3)つめ物
つめ物の破壊(壊れる、外れる)、インプラントが折れるなど。
関連するページ インプラント 歯ぎしりがインプラントに及ぼす影響
4)顎関節(がくかんせつ、あごの関節)
あごの関節の痛み、口が開けづらい、あごから音が鳴る、あごが疲れるなど。
関連するページ 顎関節症(がくかんせつしょう) 顎関節症の治療
5)全身
顔面痛、頭痛、肩こり、イライラ、倦怠感、腰痛、不眠など。
関連するページ 歯痛・顔面痛
6)その他
歯ぎしり音により、隣で寝ている人の睡眠を妨げます。口内炎ができやすくなります。
関連するページ 口内炎
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1.歯の破折 2.骨隆起(歯茎内側の出っ張り) 3.歯の摩耗(歯の内面(黄色い部分)の露出)
●歯ぎしりの症状※4、5
歯ぎしりをしている580人を対象におこなった調査では、歯ぎしりをしている人は、肩こり、頭痛、不眠・浅眠の割合が高く、ストレスを感じている人も多くいました。
歯ぎしりをしている人の症状
北海道大学の研究グループが装着した銀歯3673個を調べたところ、歯ぎしりをしている人ほど銀歯が取れやすいという結果となりました。装着15年後では、歯ぎしりをかなりしている人は24%もの銀歯が取れていました。
歯ぎしりの状態と銀歯(インレー、クラウン、ブリッジ)の脱落率
●歯ぎしりの検査
歯科医師による問診や視診のほか、特殊なシートを上の歯につけて寝ることにより歯ぎしりの状態を調べる方法もあります。
ブラックスチェッカー
関連するページ 歯ぎしりの検査
●歯ぎしりの治療方法
自分でできる治療法としては、日常のストレスを発散させるためにスポーツをしたり、散歩したり、気分転換をはかるとよいでしょう。枕を高くしないなど、寝る方法を変えるのもよいでしょう。
歯科医院での治療としては、マウスピース(ナイトガード)の作製、注射による治療(
ボツリヌス療法)、歯ぎしり防止装置(
グラインドケア)の使用などがあります。
ナイトガード
関連するページ 歯ぎしりの治療方法 歯ぎしりのセルフケア(歯軋り予防)
※1 Lavigne GJ et al:Principles and practice of sleep medicine, 4th ed.
Philadelphia: W.B. Saunders; 2005.946-959 ※2 閉塞型睡眠時無呼吸症候群と睡眠時ブラキシズム、睡眠医療 Vol.3
No.4 2009 ※3 Lavigne GJ et al. Bruxism physiology and pathology: an overview
for clinicians. J Oral Rehabil. 2008;35:476-494etc. ※4 ブラキシズムのプロトコール 調査結果から見えてきたこと、補綴臨床 Vol.40
No.4 2007 ※5 Tomonaga A, Ikeda M, Kato H, Ohata N. Influence of sleep
bruxism on dislodgement of dental restorations Nihon Hotetsu Shika Gakkai
Zasshi. 2005 Apr;49(2):221-30.
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