食道がん治療に対する口腔ケアの効果 横浜・中川駅前歯科クリニック

食道がんとは
食道は、のどと胃をつなぐ長さ25cm、太さ2〜3cmの臓器です。男性が圧倒的に多く、タバコや大量の飲酒、胃食道逆流症が発症リスクを高めます。

食道がんの手術は、食道だけでなく、のどや胃にも及ぶことがあり、胃がん、大腸がん、肝臓がんなど、他の消化器がんの手術に比べると、負担が大きいものとなっています。

国立がん研究センターがん対策情報センターの推計(2005年)によると、患者数は1.7万人、男性が8割となっています。最近では、指揮者の小澤征爾さん、サザンオールスターズの桑田佳祐さんが食道がんにかかり、闘病から復帰したことが話題となりました。

当クリニックは、国立がん研究センター連携歯科医院、横浜市周術期連携歯科医院に認定されています。

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●食道がんと肺炎※1
食道がんの手術後の合併症としては、肺炎、声を出したり食べ物を飲み込む神経(反回神経)の麻痺、感染などがあります。食道がんの大きな手術(三領域郭清術では、手術後の合併症の発症率は62%にもなります。

中でも肺炎は、手術後の死亡原因として最も多いため、注意すべき合併症です。手術後は患者さんの体力が弱まり、食べ物を飲み込む(嚥下)能力も低下することにより、口の中の細菌が肺に入りやすくなるため、肺炎を発症しやすくなります。

軽症であれば抗生物質の服用により治りますが、重症になると人工呼吸や気管切開をおこなうこともあります。


誤嚥のしくみ口の中の細菌が肺に入り肺炎をおこします

食べ物や唾液には細菌が含まれ、通常は食道を通って胃に入ります()。胃に入った細菌は、胃酸により死滅します。ところが、手術後の体力低下、老化、反回神経の麻痺を原因として気管が塞がれないと、細菌は肺()に入ってしまいます。肺に入った細菌は、肺で炎症をおこします。

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誤嚥性肺炎  がん治療に伴う口腔合併症  抗がん剤による口内炎(口腔粘膜炎)




肺炎の予防方法※2−5
肺炎の予防のためには、治療前に虫歯や歯周病の治療を済ませ、治療前後は歯のクリーニング(PMTC)を中心とした口腔ケアをおこなうことにより、口の中の細菌を増やさないことが大切です。

PMTC器具 クリーニング器具歯のクリーニングで使用する器具



歯のクリーニング(PMTC)を中心とした口腔ケアをおこなうことにより、口の中の細菌を減らすと、食道がん手術後の肺炎の発症を抑えることができます。

慶応義塾大学医学部の研究者の調査では、一般的な食道がん手術をおこなった病院の肺炎発症率は32.2%でしたが、歯科医師や歯科衛生士も参加して手術前後に口腔ケアをおこなった病院では、食道がん手術後の肺炎発症率はわずか7.6%でした。


食道がん手術後の肺炎、呼吸器不全発症率※2、3
食道がん手術後の肺炎、呼吸器不全発症率



兵庫医科大学の研究グループの調査では、手術前にグラグラする歯を抜歯したり、大きな虫歯の歯の抜歯するなど、手術前に口の中をきれいにした患者さんは、手術後の肺炎発症率が低下しました(A)。

手術前の歯科治療、歯のクリーニング(PMTC)に加え、歯みがきの練習を徹底しておこなった患者さんは、手術後の肺炎発症率がさらに低下しました(B)。


食道がん手術後の肺炎発症率
※4
食道がん手術後の肺炎発症率



近畿大学医学部の研究グループの調査では、食道がんの大きな手術(三領域郭清術)時に口腔ケアをおこなった患者さんの手術後の肺炎の発症率は23.0%でしたが、口腔ケアをおこなわなかった患者さんの肺炎の発症率33.3%となりました。

また、口腔ケアをおこなうと、手術後に口から食べ物を摂取できない期間(経口摂取中断期間)、入院日数も大幅に減少しました。

歯のクリーニング(PMTC)を中心とした口腔ケアをおこなうと、口の中の細菌が減り、肺炎の発症を防ぐだけでなく、手術後の回復も早くなります


三領域郭清術後の肺炎発症率、経口摂取中断期間、入院日数※5
三領域郭清術後の肺炎発症率、経口摂取中断期間、入院日数

※三領域郭清術とは
食道がんは首、胸、腹のリンパ節にも転移することがあり、この3つの領域を掃除(郭清)する手術がおこなわれることがあります。この手術を三領域郭清術といいます。



大阪警察病院での事例では、食道がんで全身麻酔による手術をおこなった患者さんを比較したところ、口腔ケアをおこなった患者さんのほうが、口腔ケアをおこなわなかった患者さんに比べて入院期間は4割(22日)短く、医療費は3割(139万円)安く済みました。手術後の合併症の発症率は2/3に低下、手術後の肺炎の発症率は7割減少しました。


医療費の比較※6
医療費の比較

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※1 Fang W, Kato H, Tachimori Y, Igaki H, Sato H, Daiko H. Analysis of pulmonary complications after three-field lymph node dissection for esophageal cancer Ann Thorac Surg.76(3):903-8. ※2 辻哲也 悪性腫瘍の周術期呼吸リハビリテーション リハビリテーション医学42(12)839-861 ※3 Kinugasa S,Tachibana M,Yoshimura H,Ueda S, Fujii T,Dhar DK,Nakamoto T,Nagasue N. Postoperative pulmonary complications are associated with worse short- and long-term outcomes after extended esophagectomy. J Surg Oncol.1;88(2):71-7. ※4 河田尚子ほか 食道癌術後肺炎予防のためのオーラルマネジメント 日本口腔感染症学会雑誌 17(1)31-34  ※5 足立忠文、三木仁美、松澤恵梨子、辻洋史、濱田傑、西野仁、齋藤務、加戸聖美、PENG Ying Feng、今本治彦 食道癌周術期における術後肺炎に対する口腔ケアの効用について 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌 12(1)40-48  ※6 口腔機能管理等による効果と医科歯科連携が効果的に機能している事例 日本歯科医師会


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