●骨粗鬆症(こつそしょうしょう)とは
骨粗鬆症とは、骨の量が減少し、弱くなる状態です。骨粗鬆症にかかると、骨折しやすくなり、骨折がきっかけで寝たきりになることも少なくありません。
骨の量は20~40歳頃をピークに、年齢とともに減少します。特に女性は閉経後5~10年の間に年3%以上もの急速なスピードで骨量が減少し、10年間の骨減少率は20%を超えると報告されています。
骨粗鬆症は、日本では患者数1280万人(男性300万人、女性980万人)、40歳以上の女性の1/4が患者とされ、人口の高齢化に伴い患者数は増えています。しかしながら、自覚症状がないために、骨折をおこすまで気付かないことが多いとされています。
トイレ、玄関、廊下で転倒、骨折し、骨粗鬆症に気付くことがあります
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●骨粗鬆症とビスホスホネート系薬剤、デノスマブ製剤
骨粗鬆症の治療では、ビスホスホネート系薬剤、デノスマブ製剤が頻繁に使用されます。骨を壊す細胞(破骨細胞)の働きを抑えることで骨密度の低下を防ぎ骨折を防ぎます。骨粗鬆症以外では、乳がん、肺がん、前立腺がん、関節リウマチ、多発性骨髄腫などの治療薬として使用されます。
主なビスホスホネート系薬剤
ゾメタ/リクラスト/パミドロン酸二Na/フォサマック/ボナロン/ボンビバ/ボノテオ/リカルボン/アクトネル/ベネット/ダイドロネル
主なデノスマブ製剤
ランマーク/プラリア
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●歯科治療時の問題点
ビスホスホネート系薬剤、デノスマブ製剤を投与している患者さんは、抜歯、インプラント手術、歯周病の手術といった医療行為のほか、口の中の汚れ、歯周病、インプラント周囲の歯肉の炎症(インプラント周囲炎)、歯の根の膿(根尖病巣)、合わない入れ歯、強いかむ力(過大な咬合力)、口内の骨の出っ張り(下顎隆起、口蓋隆起、顎舌骨筋線の隆起)を原因として、顎骨壊死(がっこつえし)をおこすことがあります。
顎骨壊死の症状としては、あごの痛みや腫れのほか、あごの骨が腐ってしまったり(壊死)、あごの骨が口の中に出てしまったりします。あごの骨だけに発生する理由としては、下記の特殊性が原因と考えられています。
あごの骨の特殊性
歯は上皮を破って骨まで達しているため、口の中の感染があごの骨に達しやすい/口の中には数百種類、1cm3あたり1000億~1兆もの細菌がいる/下あごの骨は骨が緻密でビスホスホネートが蓄積しやすい/虫歯、歯周病などを介してあごの骨に炎症が波及しやすい/抜歯によりあごの骨は直接外部にさらされ、感染しやすい
顎骨壊死の症状
痛み/腫れ/骨が腐ってしまう(骨壊死)/骨が口の中に出てしまう(骨露出)/膿(うみ)が出る/歯がグラグラする/潰瘍ができる/知覚麻痺(ビンセント症状)
顎骨壊死をおこすリスクの高い人
糖尿病/自己免疫疾患(シェーグレン症候群、全身性エリトマトーデス、関節リウマチほか)/人工透析中/重度の貧血/喫煙/飲酒/肥満
定期検診を受けて歯を失わないようにすることも大切です
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●日本国内における顎骨壊死の状況
日本口腔外科学会の調査では、ビスホスホネート系薬剤、デノスマブ製剤を主とする薬による顎骨壊死は2017年4950例、2018年5960例、2019年6909例が報告されており、2年で1.4倍に増加しています。報告されていないものも含めると、さらに発症数は多いとされています。
口内の汚れが顎骨壊死を引きおこします
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●抜歯前の薬の投与休止について
抜歯前に一時的に薬(ビスホスホネート系薬剤、デノスマブ製剤)の投与を休止するかは長くにわたって議論され続けてきました。
2023年に日本口腔外科学会など6つの学会がまとめた「薬剤関連顎骨壊死の病態と管理:顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2023」では、一時的に薬の投与を休止しなければならない科学的な根拠がないことから「原則として抜歯時に休薬しないことを提案する」としました。
薬の投与休止は骨折の増加、生存率の低下、骨転移によって生じる骨折、麻痺、高カルシウム血症(骨関連事象、SRE)の増加がおきる可能性があります。また、重症の歯周病などではそれ自体が感染源になり顎骨壊死の原因となるため、抜歯する必要があるとの意見もあります。
●歯科治療を受ける時の注意事項
骨粗鬆症の患者さんは、歯科治療を受ける際は必ず歯科医師に相談するようにします。
ビスホスホネート系薬剤、デノスマブ製剤を投与している場合は、口の中を清潔にすることが顎骨壊死の発症を防ぐ最善の方法とされています。歯みがきが不十分であったり、歯垢や歯石が多いなど、口の中が汚れていると顎骨壊死を発症しやすい傾向があります。
顎骨壊死を防ぐためには、毎日の歯みがきをしっかりするのはもちろんのこと、歯科医院で虫歯、歯周病の治療や歯のクリーニン(PMTC)などの予防処置を受けるようにします。
医師、薬剤師向けの薬の説明書類(添付文書、下図)には、1)服用開始前に口内の状態を確認し、抜歯などの処置はできる限りすませること、2)口内を清潔に保ち、定期的な歯科検診を受けることが明記されています。
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