●乳がんとは
乳がんは決して珍しい病気ではなく、日本人女性の9人に1人がかかる病気です。まれに男性もかかります。
年齢では、30歳代後半から患者さんが増えて50歳前後でピークとなり、その後は減少傾向にあります。患者さんは年々増え続けています。
乳がんは決して珍しい病気ではありません
当クリニックは、国立がん研究センター連携歯科医院、横浜市周術期連携歯科医院に認定されています。
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●乳がん治療時の口腔の問題※1
乳がん治療では、抗がん剤治療がおこなわれます。抗がん剤治療によって口腔粘膜炎、口内炎、虫歯、歯周病、ドライマウス(口腔乾燥症)、味覚障害、知覚過敏、感染症を発症することがあります。
また、乳がんの患者さんの47〜85%に骨転移が発症するとの研究報告もあり、骨への転移を防ぐために、ビスホスホネート系薬剤、デノスマブ製剤が使用されることが多くあります。これらの薬により、顎骨壊死(がっこつえし、あごの骨が死んでしまい失ってしまうこと)をおこすことがあります。
日本口腔外科学会の全国調査(2011〜2013年調査)では、調査期間中に4797例のビスホスホネート系薬剤による顎骨壊死が報告され、原因となった病気の1/4が乳がんでした。
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●口腔粘膜炎※2−4
口腔粘膜炎は、口の中の粘膜にあらわれる炎症をいいます。乳がん治療中は、抗がん剤治療の影響により高い確率で発症します(下図:乳がん治療における口腔粘膜炎の発症率)。
多くは軽症から中等度の口腔粘膜炎で、口の中が痛い、血が出る、熱いものや冷たいものがしみる、口の中が渇く、口が動かしにくい、食べ物が飲み込みにくいといった症状がでることがあります。
痛みにより食事や会話がしにくくなり、身体的な苦痛だけでなく、精神的にも大きな苦痛を伴います。抗がん剤の投与1〜2週間後に症状のピークを迎えます。抗がん剤は繰り返し投与されるため、投与の度に発症します。
乳がん治療の多くは入院せずに通院治療でおこなわれます。そのため、診察のときには口腔粘膜炎の症状が改善されていることが多く、症状を過小に評価されることもあります。
研究者 | 患者数 | 治療方法 | 発症率 |
サンカルロス大学病院 (スペイン) |
736人 | FAC療法 | 53% |
744人 | TAC療法 | 69% | |
テキサスオンコロジー (アメリカ) |
510人 | AC療法 | 45% |
506人 | TC療法 | 33% | |
クロスキャンサーインスティテュート(カナダ) | 213人 | AT療法 | 58% |