ドライマウス(口腔乾燥症)の治療では、生活習慣の改善と同時に薬剤を使用することがあります。薬剤による治療では、人工唾液や保湿剤の使用、薬の服用をおこないます。
●人工唾液・サリベート
日本で使用できる唯一の人工唾液。口の中にうるおいを与え、ドライマウスの症状を改善します。シェーグレン症候群や放射線障害によるドライマウスの治療に健康保険が適応されます。ドライマウスの症状のみでは健康保険は適応されません。
味が悪く、効果の点から保湿剤が配合された洗口液、スプレーのほうがおすすめです。
サリベート
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●保湿剤が配合された洗口液(うがい薬)、スプレー
保湿剤が配合された洗口液やスプレーは、口の中を潤す目的で製品化されました。洗口液がほとんどですが、スプレーも販売されています。飲み込んでも問題なく、人工唾液と同様の役割をもっています。ジェルに比べると、口の中に広がりやすい利点があります。
軽症のドライマウスではジェルや洗口液は洗い流されてしまうため、手軽に何度もできるスプレーがおすすめです。歯科医院などで購入します。
1)オーラルウエット、オーラルウエットスプレー 当クリニックにて販売
保湿成分・ヒアルロン酸の配合された洗口液、スプレーです。洗口液、スプレーとも同一成分です。スプレーは外出時に持ち運ぶことができます。
ヒアルロン酸は、カンジダ菌の繁殖を抑える効果もあります。口腔カンジダ症を繰り返すドライマウスの患者さんに効果的なこともあります。
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2)絹水、絹水スプレー
日本で初めて保湿成分・ヒアルロン酸を配合した洗口液。オーラルウエットとまったく同じ成分ですが、販売する会社が異なります。
3)アクアバランス 当クリニックにて販売
保湿効果はやや弱いものの、さわやかなレモンの香味が口内を爽快にするほか、口臭を予防する成分が配合されています。
オーラルウエットスプレー 絹水スプレー アクアバランス
●保湿ジェル
保湿ジェルは、口の中を潤す目的で製品化されました。洗口液やスプレーに比べると、効果の持続時間が長いのが特徴です。飲み込んでも問題はありません。重症のドライマウスにおすすめです。歯科医院などで購入します。
1)オーラルバランス 当クリニックにて販売
抗がん剤による口腔粘膜障害の治療薬として開発される中で生まれました。唾液の成分が配合され、効果の持続時間が長く、抗菌効果がある反面、ジェルになじめない人も少数ですがいます。最も普及している保湿ジェルです。
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2)フィットエンジェル
グリセリンの保湿、潤滑作用によってドライマウスの症状を緩和します。ジェルタイプのほかリキッドタイプもあります。
オーラルバランス フィットエンジェル
●唾液分泌促進薬
唾液分泌促進薬は、唾液の分泌を増加させる内服薬です。唾液の量を増やし、ドライマウスの症状を緩和させます。国内では数種類が販売されています。薬の種類や症状により、3ヶ月から1年ほどの服用が必要になります。漢方薬に比べると、副作用が強く、多汗、下痢、頻尿などをおこすことがあります。
1)サリグレン(セビメリン塩酸塩水和物)、エボザック(同)
唾液分泌刺激薬としては最も多く使用されますが、ドライマウスの症状のみでは健康保険は適応されません。シェーグレン症候群に伴うドライマウスの治療などに健康保険が適応されます。
服用後半年で症状の改善率が最大となります。唾液腺の機能が著しく低下した人(10分間のガムテストで3ml以下)は、効果は限定されたものになります。
下痢や吐き気などの副作用がみられることがあるため、最初は少量の服用から始め、少しずつ服用量を増やして慣らしていったり(ステップアップ法)、最初は水に溶かして服用(口腔リンス法)することで、副作用をおこさないようにしていきます。
自覚症状スコア変化率 |
唾液分泌量増加率 |
唾液増加量(ガムテスト) |
57.0% |
138.2% |
4.5ml/10分 |
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2)サラジェン(塩酸ピロカルピン)
シェ―グレン症候群、頭や首の放射線治療に伴うドライマウス治療などに健康保険が適応されます。サリグレン、エボザックと効果は似ていますが、短期間で唾液が増えやすい傾向があります。ドライアイにも効果があるとされています。
副作用として、汗を多くかいたり(多汗)、頻尿がみられることがあります。副作用を抑える方法として、服用量を半分にして、服用回数を増やす方法があります(少量多分割投与療法)。
安静時唾液増加率 |
口腔乾燥感改善率 |
会話障害改善率 |
200.3% |
53.3% |
53.4%(服用12週間後) |
サリグレン サラジェン
3)セファランチン(アルカロイド製剤)
円形脱毛症や白血球減少症に使用される薬ですが、唾液腺が破壊されるのを防ぐ効果があることがわかり、ドライマウスに効果があるとされています。現在(2016年)健康保険適応に向けた研究が進められています。
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●漢方薬
歯科では唾液分泌促進薬を処方することはまれで、主に漢方薬が使用されます。漢方薬の服用とあわせて、食生活、生活リズムなどの生活習慣の改善をおこないます。漢方薬による治療は、生活習慣の改善を同時におこなうことが重要となります。
最も使用される漢方薬は、白虎加人参湯と麦門冬湯です。その他、五苓散、十全大補湯などが使用されます。唾液分泌促進薬に比べると、副作用が少ないのが特徴です。
1)白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)
ドライマウスの治療では、最も広く使用されている漢方薬です。比較的体力があり、発熱時の水を飲みたくなるような口の渇きがある人に向いています。
向精神薬や抗がん剤の副作用による薬剤性ドライマウス、放射線治療後のドライマウスや味覚障害にも使用されます。
関連するページ 薬剤性ドライマウス 放射線障害性ドライマウス 味覚障害
2)麦門冬湯
もともと咳の違和感や乾燥感に適応される漢方薬ですが、ドライマウスの改善にも効果があります。
舌が正常よりも赤く、血液の濃縮や脱水が考えられるとき、舌表面が乾燥して痰がからむ咳をするときに使用されます。白虎加人参湯とは対照的に体力が低下している人に向いています。
3)五苓散(ごれいさん)
舌に歯の痕がみられたり、唾液がネバネバしているドライマウスに使用されます。水分の代謝を調整する作用があります。白虎加人参湯、麦門冬湯に次いで多く使用されます。
4)十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)
病後、術後、慢性的な病気で疲労衰弱しているときのドライマウスに使用されます。
抗がん剤や放射線治療によるドライマウス、味覚障害、口内炎(口腔粘膜炎)などの副作用を和らげる効果があります。
関連するページ がん治療に伴う口腔合併症 抗がん剤による口内炎(口腔粘膜炎)
5)滋陰降火湯(じいんこうかとう)
高齢者など体力の低下している人で、のどに潤いがなく、痰が出なくて咳き込むような症状に効果があります。
白虎加人参湯 麦門冬湯
その他に、温経湯(おんけいとう)、八味地黄丸(はちみじおうがん)、小柴胡湯(しょうさいことう)、六君子湯(りっくんしとう)、半夏厚朴湯(はんげこうぼうとう)、加味逍遥散(かみしょうようさん)などが使用されます。
上記は研究論文で効果があると記載されている薬を列挙したものであり、当クリニックで全てを使用しているわけではありません。
●その他
コエンザイムQ10(キューテン)
コエンザイムQ10はもともと医薬品でしたが、規制緩和によって老化防止や美肌などのサプリメントとして広く使用されるようになりました。コエンザイムQ10を摂取すると、唾液量が増えることが歯科大学の研究によりわかり、実用化に向けた研究がおこなわれています。
当クリニックはドライマウス(口腔乾燥症)唯一の学会組織である「ドライマウス研究会」が発足した2002年からメンバーとして参加しています。
※当クリニックへのアクセスについては、下記のページをご覧ください。
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関連するページ ドライマウス(口腔乾燥症) シェーグレン症候群(Sjogren syndrome)