●放射線障害性ドライマウス
顔や首に発生したがんの治療では、放射線治療がおこなわれ、大きな成果を上げています。しかしながら、がん治療時に照射された放射線によって唾液腺の細胞も障害を受け、唾液が出なくなることがあります。これを放射線障害性性ドライマウスといいます。
唾液が出なくなると、食事がしにくいい、食べ物の味がしない、話しにくい、口の中がヒリヒリする等の症状がみられるようになります。また、虫歯、歯周病、口臭、口内炎、味覚障害、口腔カンジダ症の原因にもなります。
放射線治療に加えて手術に伴い唾液腺が摘出されると、さらに唾液は出なくなり、ドライマウスの症状は悪化します。
放射線治療によってドライマウスを発症することがあります
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●頭頸部がん
口、あご、鼻、耳、のどなど、鎖骨より上、脳より下の部分を頭頸部(とうけいぶ)といい、この部分にできる「がん」を総称して頭頸部がんといいます。全てのがんに対して占める割合は5%ほどですが、この部位には生活していくうえで欠かせない臓器が狭い部位に集まっています。
頭頸部
頭頸部がんは、重要な臓器が入り組み手術の難易度が高いこと、放射線治療の効果が判別しやすいこと、正確な放射線照射をおこないやすいことなどから、放射線治療が多くおこなわれます。ドライマウスは主に頭頸部がんの放射線治療時に発症します。
20Gy(グレイ)以上の照射でドライマウスの症状があらわれ、30〜60Gyの照射で、唾液腺の機能は30〜50%ほど失われます。放射線照射後、唾液腺の機能は数年で多少回復しますが、十分でないことがほとんどです。
主な頭頸部がん
口腔底がん/歯肉がん/頬粘膜がん/口唇がん/舌がん/上顎がん/鼻腔がん/耳下腺がん/顎下腺がん/甲状腺がん/上咽頭がん/中咽頭がん/下咽頭がん/喉頭がん
頭頸部がんの放射線治療に伴うドライマウス(口腔乾燥症)の変化
放射線量 | 開始〜20Gy | サラサラした唾液から、ネバネバした唾液になる。味覚障害がおきる。 |
20〜60Gy | 唾液の分泌量が減る。口からの食べ物の摂取が次第に難しくなる。 | |
60〜70Gy | ドライマウスの症状が悪化。口内炎(口腔粘膜炎)と重なり、会話や食べ物を飲み込むのが難しくなる。 | |
放射線治療後 | 多少改善するものの、ドライマウスの症状は続きます。味覚障害は治ります。 |