新型コロナウイルス感染症の影響により、2020年の夏は例年に比べると脱水症になりやすいとされています。
熱中症の患者さんは5月から増加を始め、特に7月下旬の梅雨明けから急増します。熱中症によって救急搬送される人は多く、2019年は7.1万人が救急搬送されました。
搬送された人では高齢者が最も多く52%、次いで成人(18歳以上65歳未満)が35%、搬送場所は自宅が最も多く、次いで道路、屋外、仕事場となっています(2019年)。
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熱中症とは
気温の高い環境にいることで、体温の調節機能が低下したり、体内の水分や塩分のバランスが崩れたりすることでおこる、めまい、頭痛、けいれん、意識障害などの症状を熱中症といいます。
熱中症を引きおこす要因には、高い気温や湿度、風邪が弱い、日差しが強いなど「環境」によるものと、疲れ、寝不足、病気、激しい運動、身体が暑さに慣れていないなど「身体」によるものがあります。
熱中症の症状は発熱、倦怠感、頭痛など、新型コロナウイルス感染症と熱中症の症状は似ており、脱水症の治療は緊急を要する治療のため、注意が必要となります。
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新型コロナウイルス感染症と熱中症
新型コロナウイルス感染症の影響により、マスクをつけて過ごすことが多くなりました。マスクを常時つけていると、身体の水分が減っていても口内は乾きにくくなるため、脱水症状に気付きにくくなります。また、こまめな水分補給がしにくく、脱水症状がおきやすくなります。
夏場にもマスクをつけていると、冷たい空気が肺に届きにくく、呼吸の筋肉の動きが活発して呼吸が増加するため、体内に熱がこもりやすくなります。
2020年の春は緊急事態宣言が出され、外出自粛が長い期間続きました。例年であれば外出したり、運動をしたりすることで少しづつ暑さに慣れていきますが、2020年は汗をかいて体温を下げる機能が十分備わらないまま、暑い季節をむかえることになります。
脱水は免疫力の低下につながり、ウイルスに感染しやすくなるので、十分な予防が必要となります。
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●マスクの着用について
厚生労働省(2020年6月現在)は感染予防に有効なため、夏季においてもマスクの着用をお願いしていますが、マスクの着用は心拍数や呼吸数の増加、体感温度が上昇するなど、身体に負担がかかることがあります。
そのため、高温多湿の環境で屋外で人と十分な距離(2m以上)が確保できるときは、マスクを外すことをすすめています。
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●熱中症の予防
1)こまめな水分補給
汗は、身体の熱を逃がして体温が上がり過ぎないように調節する役割があります。水分補給がされないと、汗の量が減り、体温が上がってしまいますので、こまめな水分補給をおこなうようにしましょう。
特に高齢の方は水分補給が少ないことが多く、またドライマウスを発症していることが多く、いつも口やのどが渇いているために、脱水の症状が気付きにくいことがあります。口やのどが渇いていなくても水分補給をおこないましょう。
カフェイン、アルコールには利尿作用があり、脱水症状を強めるため、緑茶、コーヒー、ビールは水分摂取としては避けるようにします。
歯の健康に気を付ける必要がありますが、レモン、オレンジなどかんきつ類や酢は、クエン酸が多く含まれ疲労回復に効果的なため、飲料として摂取するのもおすすめです。
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2)エアコンを使用
新型コロナウイルス感染症の影響により、室内にいる時間が長くなっていますが、気付かないうちに室内の温度が上がっていることがあります。エアコンを上手に活用して熱中症を防ぎましょう。
筋肉は身体に水分を貯める最大の臓器ですが、高齢になると筋肉は減少して保持できる水分が少なくなり、脱水をおこしやすくなります。高齢の方は暑くてもエアコンを使用しないことが多い傾向にありますが、熱中症予防のためにエアコンの使用は必須となります。
3)身体を冷やす
水分補給やエアコン以外にも、うちわを使用する、衣服を工夫する、外出時は休憩を増やす、マスク装着しての激しい運動は避けるなど、身体を冷やす工夫をします。
4)暑さ指数をチェック
暑さ指数は気温、湿度、輻射熱(ふくしゃねつ、放射熱)から算出された指数です。どのような温度環境でどのように過ごしたらいいかが分かります。毎年6月頃から9月頃まで環境省が毎日発表、テレビの天気予報でも各地の暑さ指数が紹介されていますので、チェックしていきましょう。
5)十分な睡眠
暑い季節は睡眠時間が短くなりますが、睡眠不足は免疫力を弱めてウイルスに感染しやすくなるだけでなく、熱中症にもかかりやすくなります。適度な温度、湿度の室内で、十分な睡眠をとるようにしましょう。
6)十分な栄養
朝食を食べなかったり、お酒を飲み過ぎたり、栄養にかたよりがあると、免疫力が弱まりウイルスに感染しやすくなるだけでなく。熱中症にもかかりやすくなります。
汗をかいたときに体内から塩分(ナトリウム)とカリウムが失われます。塩分の補給をおこなうだけでなく、海草、ほうれん草などカリウムを多く含む食材や疲労回復のために豚肉、大豆、きのこ類などビタミンB1を多く含む食材を取り入れていくのも方法です。
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7)夏用マスクの使用
新型コロナウイルス感染症の状況によっては、真夏の時期もマスクを常時つける必要があるかもしれません。夏用マスクは、汗を吸い取りやすい、汗が乾きやすい、蒸れを軽減、熱を冷ますといった機能があり、熱中症対策に有効です。