●金属アレルギーとピアス
ピアスを購入する際、どの様な金属でできているかを気にする人はあまりいないと思います。ところが、ピアスは最も金属アレルギーを発症しやすい製品の一つとなっています。

金属アレルギーを発症すると、ピアスだけでなく指輪、ネックレス、腕時計をつけるだけで皮膚が赤くなったり、かぶれたり、腫れたり、かゆくなったり、膿(うみ)がでることがあります。顔面に湿疹がでたり、全身に蕁麻疹(じんましん)がでたり、円形脱毛症になることもあります。

また、不適切なピアスの使用が、歯科金属アレルギー(銀歯など歯科金属を原因とする金属アレルギー)の誘因となることもあります。

このような症状を引きおこさないためにも、金属アレルギーを予防方法について知っておくことは大切となります。

金属アレルギー 金属アレルギーにより赤くかぶれた耳

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●ファーストピアス
最初につけるピアス(ファーストピアス)は、穴をあけたばかりの耳につけることになります。耳の皮膚は傷になっており、傷口に金属が直接触れることになります。

ファーストピアスは特に金属アレルギーを発症しやすい時期です。金属アレルギーを予防するためには、最初につけるピアス(ファーストピアス)は、プラスチック、セラミック、シリコン、チタンなど、金属アレルギーの原因にならないピアス、金属アレルギーの原因になりにくいピアスを選択することが大切です。

また、ピアスの穴あけ(ピアッシング)は医療行為のため、医療機関でおこなうことも大切です。

ピアス ファーストピアスには要注意



●ピアスの金属成分※1
ピアスを歯科大学の研究者が分析したところ、銅(79%の製品に含まれている)が最も多くの製品に使用され、以下ニッケル(66%)、鉄(61%)、亜鉛(48%)、クロム(46%)となりました。構成成分では銀が最も多く含まれ、以下チタン、ニッケル、銅、鉄となりました。

このうちアレルギーを発症しやすい金属はニッケル、クロムです。ニッケル、クロムは、体液や汗、皮脂に溶け出しやすい性質があります。

ステンレスは鉄を錆びにくくするためにニッケルやクロムを含ませた合金です。ステンレス製ピアスは、金属アレルギーを発症しやすい傾向があります。


ピアスの金属成分

 ニッケル(最もアレルギーをおこしやすい) クロム(アレルギーをおこしやすい)

 銀(構成成分では最も多く含まれる)  銅(最も多くの製品に使用されている)

 金   白金   コバルト   鉄   亜鉛   チタン   など


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ニッケルアレルギー
ニッケルによる金属アレルギーは極めて多いのが現状です。世界で最も多いアレルギーはニッケルと言う専門家もいます。

そのため、ヨーロッパ(EU)では1994年にピアス、イヤリング、指輪、腕時計など、皮膚に長時間接する製品に対して、ニッケルの使用が規制されました。その後、2004年、2009年に規制はさらに強化されていきました。

一方で、日本はニッケルに対する規制はなく、ピアスの大半の製品に使用されています。ニッケルが入っていても、安全性が高いと誤解を招きやすい商品表示もあります。

その結果、ヨーロッパではニッケルアレルギーの患者さんが少しずつ減り続けているのに対し、日本ではニッケルアレルギーの患者さんが少しずつ増え続けています。


間違いやすい商品表示
ステンレス
ステンレスは鉄を錆びにくくするためにニッケル、クロムを混ぜた合金です。アレルギーをおこしやすため、ヨーロッパでは使用が規制されています。
医療用ステンレス
(サージカル
ステンレス)
錆びにくく、溶け出しにくい特徴はありますが、代表的な医療用ステンレス「SUS316L」の場合で、金属アレルギーの原因となるニッケルは10〜14%、クロムは16〜18%も入っています。
「医療用」と言うと安心感はありますが、チタンなどの金属に比べると、金属アレルギーを引きおこしやすい素材と言えます。
 ニッケルフリー ニッケルフリーと言っても、少量のニッケルが含まれており、金属アレルギーの原因になることがあります。

腕時計  ピアス ニッケルアレルギーによる皮膚炎(赤くなった部分)



●ニッケルアレルギーと銀歯※2、3

日本で使用される健康保険の銀歯のほとんどは、金、銀、銅、パラジウムなどが入った「金銀パラジウム合金」という合金が使用されます。ニッケルアレルギーの人は、パラジウムアレルギーにもなりやすい傾向にあります。

愛知学院大学歯学部の研究者が、金属アレルギーの患者さん1000人に対してパッチテスト(金属アレルギー検査)をおこなったところ、ニッケルにアレルギーのあった人の53%はパラジウムにもアレルギーがありました。

徳島大学歯学部の研究者がおこなった調査でも同様の報告がされており、欧米並みにピアスが普及すると、パラジウム(健康保険の銀歯)のアレルギーも増加すると指摘しています。

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金属アレルギーを調べる方法
金属アレルギーを調べるには、パッチテストという検査を受けます。パッチテストにより、自分が何の金属にアレルギーがあるかが分かります。

当然のことながら、アレルギーのある金属が成分に含まれているピアスは、使用しないようにします。パッチテストは主に皮膚科でおこなっています。

パッチテスト パッチテスト検査薬

関連するページ  パッチテスト



金属アレルギーの予防方法
ピアスによる金属アレルギーを予防するためには、下記の項目を守ることが大切となります。ご不明な点などがありましたら、ご来院の際にお問い合わせください。



アレルギーをおこしやすい金属(ニッケル、クロムなど)を使用したピアスは避けるようにします。ステンレス製ピアスは、医療用ステンレス(サージカルステンレス)であってもニッケルやクロムを多く含むため、避けるようにします。

樹脂製など金属を使用しないピアス、もしくは樹脂でコーティングされた金属製ピアスをなるべく使用するようにします。金属が皮膚に触れるのであれば、(費用はかかりますが)貴金属が主成分のピアスを使用します。

ファーストピアスは金属アレルギーの原因になりやすいため、特に注意が必要です。

夏は汗によって金属が溶け出すため、金属アレルギーを発症しやすくなります。運動をしているとき、暖房が強い室内も汗によって金属が溶け出すため、注意が必要です。




※1 Journal of environmental dermatology and cutaneous allergology 6(4), 359-367, 2012 ※2 細木真紀、田島登誉子、西川啓介、竹内久裕、松香芳三、久保宜明 ニッケル含有ピアスによる金属アレルギー発症の危険性について  Journal of Environmental Dermatology and Cutaneous Allergology 8(1)12-20 2014  .※3 池戸泉美, 竹内一夫, 水野辰哉, 服部正 歯科用金属による金属アレルギーを疑った患者の疫学的調査 Journal of Environmental Dermatology and Cutaneous Allergology8(1): 1-11 2014


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