●チタンアレルギー.
チタンは身体に優しく、アレルギーをおこしにくい金属ですが、アレルギーを全くおこさない金属ではありません。
人類がチタンの使用を始めたのはごく最近のことです。それまではチタンに接する機会はほとんどありませんでしたが、最近では消臭剤や化粧品などの日用品のほか、インプラント、ペースメーカー(人工心臓)、人工関節など、体内にもチタンが使用されるようになりました。
チタンに接する機会が多くなった結果、チタンアレルギーを発症する人は増えています。腋臭止め(デオドラント)や顔料(ファンデーション)など、日用品の使用によるチタンアレルギーの報告例は多くあります。
医療分野も例外ではなく、世界では1980年代からペースメーカー、人工関節、インプラントによるチタンアレルギーの報告がされています。
チタン製の包丁 チタン製のゴルフクラブ
関連するページ 歯科金属によるアレルギーについて 金属アレルギー Q&A チタン
●チタンアレルギーの頻度※1-3etc.
チタンアレルギーは、金、ニッケル、クロムなど他の金属に比べるとかなり少ないものの、歯科大学などの研究報告によると、数%の人がチタンアレルギーとなっています。
広島大学病院が金属アレルギーの疑いで来院した408人に対してパッチテスト(金属アレルギー検査)をおこなったところ、1.7%の人にアレルギー反応がみられました。東京歯科大学千葉病院が約600人に対しておこなった検査でも、同様の結果となりました。
スペインの大学でわれた大規模な調査によると、インプラント治療の受診者1500人にパッチテストをおこなったところ、0.6%の人にチタンアレルギーがみられました。
また、広島大学病院がインプラント治療前に、問診で金属アレルギーの疑いの高かった人にパッチテストをおこなったところ、15%の人にチタンの陽性反応、あるいは疑陽性の反応がみられました。
チタンアレルギーの頻度
研究機関 |
結果 |
東京歯科大学 |
約600人にパッチテスト(アレルギー検査)をおこなったところ、10人ほどにチタンの陽性反応(アレルギー反応)がみられた。 |
愛知学院大学
歯学部 |
1000人にパッチテストをおこなったところ、5人(0.5%)にチタンの陽性反応がみられた。 |
広島大学
歯学部 |
408人にパッチテストをおこなったところ、7人(1.7%)にチタンの陽性反応がみられた。 |
インプラント治療予定者にパッチテストをおこなったところ、15%の人にチタンの陽性反応、あるいは疑陽性の反応があった。 |
徳島大学
歯学部 |
チタンに陽性反応を示す人が増加している。10%以上の人がチタンに陽性、疑陽性だった年もあった。 |
カロリンスカ
研究所
(スウェーデン) |
金属アレルギーが疑われた患者3042人にイライザ法にて検査をおこなったところ、184人(5.8%)にチタンアレルギーがあった。 |
オビエド大学
(スペイン) |
インプラント治療の受診者1500人にパッチテストをおこなったところ、9人(0.6%)にチタンの陽性反応がみられた。 |
専門誌での報告例
当クリニックでは、歯科金属アレルギー治療の一環としてチタンのパッチテストをおこなっています。パッチテストのみの診療はできませんのでご了承ください。
関連するページ パッチテスト、イライザ法
●チタン製品におけるアレルギー※4
アクセサリー、メガネ、時計など、市販のチタン製品で、皮膚かぶれなどのアレルギーをおこす人がいますが、ほとんどはチタンにアレルギーがあるのではなく、他の金属に対してのアレルギーとなっています。
市販のチタン製品のほとんどは、チタンと他の金属を混ぜ合わせた「チタン合金」で、多くはニッケル、クロムなどの価格が安く、金属アレルギーをおこしやすい金属を含んでいます。
チタン以外の金属が多く含まれているチタン製品もありますが、純チタン(100%チタン)としている製品でも、製造途中に金属製の製造装置からニッケルなどの金属が混入することがあります。
ルートヴィヒ・マクシミリアン大学(ドイツ)が発表した研究によると、全てのチタン材料は非常に微量であるものの、チタン以外の金属を不純物として含んでいるとのことです。そして、不純物中のニッケル、クロム、パラジウムなどの金属が、アレルギーを引きおこす原因になっているとのことです。
あるチタン製メガネは、成分の72%がニッケル、チタンは僅か6%でした
関連するページ アレルギーをおこしやすい金属 金属アレルギーの予防法 日常生活で使用する金属
●インプラント治療におけるチタンアレルギー※5-9etc
インプラントのほとんどはチタンでできています。インプラントにおいても、アレルギーの報告が歯科大学を中心にされてきています。
1)手術時に使用するドリル(切削器具)の金属片が骨内に飛び散る、2)手術時にインプラント表面のチタン粒子が剥がれる、3)インプラント周囲炎(インプラント周囲の炎症)によって、インプラント表面のチタンが溶け出す等が原因として考えられています。
症状は他の金属アレルギーと同じで、全身の湿疹、顔面の湿疹、口唇炎、口腔扁平苔癬(こうくうへんぺいたいせん)などです。また、チタンアレルギーを原因として、インプラント周囲炎の報告もされています。
金属製ドリルを使用して骨に穴を開け、インプラントを入れます
関連するページ インプラント 扁平苔癬
●インプラント治療におけるチタンアレルギーの報告例※5-9etc.
下記は報告されたチタンアレルギーの一例です。国内外で報告がされています。
1)54歳、男性
インプラント4本を入れてから3~4か月後に手足、背中、胸に発疹。パッチテストをおこなったところパラジウム、金、チタンにアレルギー反応。リンパ球刺激試験(
LST)ではチタンに強いアレルギー反応。
インプラントを入れてから1年後に全てのインプラントを撤去。撤去後10日間は皮膚の発疹は悪化したものの、2か月ほど経つと皮膚の発疹は気にならない程度に落ち着いた。
2)75歳、女性
インプラント2本を入れてから2日後に頬がかさかさになり、全身に発疹が出る。パッチテストをおこなったところ金、銀、パラジウム、チタンにアレルギー反応。リンパ球刺激試験(
LST)ではチタンに強いアレルギー反応。
インプラントを入れてから2か月後に撤去。撤去後すぐに症状が治まる。
3)25歳、女性
インプラントを入れてから半年後の検診で、インプラント周囲の腫れと骨の吸収を認めた。色々と治療を試みたものの症状は改善せず。問診をおこなうと、チタン製品でかぶれたことがあるとのこと。インプラントを入れてから1年4か月後に撤去に至った。
4)47歳、女性
インプラントを入れた3日後に手や腕に発疹。パッチテストをおこなったところ、チタンにアレルギー反応。30日後にインプラントを除去し、除去してから2日後に皮膚症状が消失。
インプラントの構造
●チタンアレルギーがある人のインプラント治療
チタンにアレルギーがある人でも、ジルコニアインプラントを使用することで、インプラント治療を受けることができます。ジルコニアインプラントはセラミックスでできたインプラントで、金属を使用していないため、金属アレルギーの人でも使用することができます。
チタン製インプラント(左)とジルコニアインプラント(右)
関連するページ ジルコニアインプラント ジルコニアインプラント Q&A
※1 Sicilia Alberto、Cuesta Susana 、Coma Gerardo、Arregui Ignacio、Guisasola
Cristina 、Ruiz Eduardo 、Maestro Antonio Titanium allergy in dental
implant patients: a clinical study on 1500 consecutive patients Clinical
Oral Implants Research19(8)823–835、2008 ※2 北川雅恵ら 広島大学病院歯科における歯科用金属アレルギー被疑患者を対象としたパッチテストおよび元素分析の動向(第1報)過去10年間の業績 広島大学歯学雑誌
40(2)124-128、2008 ※3 北川,雅恵ら 歯科用金属アレルギーの動向 : 過去10 年間に広島大学病院歯科でパッチテストを行った患者データの解析 日本口腔検査学会雑誌4(1)23-29 2012 ※4 Thomas Harloff、Ulrich Holzwarth、Rainer Bader、Peter Thomas、Alexander Schuh Titanium allergy or not? “Impurity” of titanium implant materials Health2(4)306-310 2010 ※5 小野擴仁、早野圭 金属アレルギーにおけるインプラント除去の1症例 歯科学報104(5)491-496、2004 ※6 和泉雄一、荒川真一 インプラント治療をめぐる問題点(インプラント周囲バイオフィルム構成細菌とチタンアレルギー) 日本歯科医師会雑誌63(9)87-88
2010 ※7 岩坪昤子、滝野雅文 インプラントでのチタンアレルギーを経験して 日本歯科評論 69(10) 113-120、2009 ※8 井上孝、松坂賢一 金属アレルギー、特にチタンアレルギーについて
(特集 インプラント治療の適応を見直そう(2)リスクを抱える患者への応用) 日本歯科評論 68(12)87-92、2008 ※9 細川隆司、赤川安司 チタンインプラントに対する金属アレルギーのリスク 広島大学歯学雑誌34(1)1-5、2002
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