●口の中の細菌はインフルエンザウイルスのサポーター
インフルエンザウイルスは大腸菌やブドウ球菌の1/10、僅か1/10000mmの大きさで、標的となる細胞にくっつき、侵入します。細胞に入り込んだインフルエンザウイルスは、細胞のエネルギーやタンパク質を作る働きを利用して仲間を増やしていきます。また、その過程で細胞を破壊します。
インフルエンザウイルスは、鼻から喉(のど)にかけての粘膜にくっつき、細胞に侵入します。ただし、通常は粘膜はタンパク質で覆われているため、インフルエンザウイルスはなかなかくっつくことはできません。
口の中の細菌はプロテアーゼ、ノイラミニダーゼという酵素をつくります。プロテアーゼ、ノイラミニダーゼは粘膜を覆っているタンパク質を破壊して、インフルエンザウイルスが粘膜にくっつき、細胞に侵入するのを手助けします。また、細菌が出す毒素(内毒素)は炎症をおこし、感染を拡大させます。
口の中が汚れていると細菌が増殖し、粘膜を覆っているタンパク質が破壊され、インフルエンザウイルスは粘膜にくっつきやすくなり、細胞に侵入しやすくなります。結果として、インフルエンザの発症要因となります。
口内が汚れていると、インフルエンザを発症しやすくなる。 |
口内の細菌がウイルスを手助け
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●歯磨きでインフルエンザ予防
毎年冬になると流行するインフルエンザ。口の中をきれいにすることで、インフルエンザの予防ができることが、明らかにされています。
毎日の歯磨きをしっかりおこない、歯科医院での歯周病や虫歯の治療、歯のクリーニング(PMTC)などをおこなうことで口の中の細菌を減らすと、プロテアーゼやノイラミニダーゼの量が減り、インフルエンザの発症も抑えられるとされています。
新型インフルエンザウイルス(インフルエンザA/H1N1)
口の中をきれいにすることでインフルエンザを予防する取り組みは、医療機関、介護施設、学校などで広まってきています。
一例として、2009年から2010年のインフルエンザ流行時に、杉並区の区立小学校で洗面台を増設、歯磨きを促進する運動をおこなったところ、インフルエンザによる学級閉鎖は半分近くまで減少したとことです。
歯の清掃でインフルエンザを予防(産経新聞)
歯磨きをしっかりおこなったり、歯科医院で歯のクリーニング(PMTC)をおこなうことで、インフルエンザの予防がはかれる。 |
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●インフルエンザ予防効果の一例※1
東京歯科大学の研究グループが東京都府中市の介護施設において、入居者に対して通常の歯磨きだけでなく、歯科衛生士が週1回、歯の清掃(口腔ケア、歯のクリーニング)を実施したところ、歯磨きだけの入居者に比べるとインフルエンザの発症率が87%も減少、風邪の発症率も24%も減少しました。
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●口の中の細菌が増殖すると、インフルエンザ治療薬の効果も低下※2etc.
日本大学歯学部の研究グループは歯周病菌がインフルエンザウイルスの感染を手助けしているとの研究結果を2015年に発表しました。
研究グループは、2014年冬に流行したA香港型ウイルス(H3N2)で実験。このインフルエンザウイルスに歯周病菌を混ぜるとインフルエンザウイルスの感染が広がり、歯周病菌がつくる酵素(ジンジパインRpg)がインフルエンザウイルスの感染能力を高めることも突き止めました。
この研究グループは、口の中の歯周病菌などの細菌が増殖すると、タミフルなどのインフルエンザ治療薬の効果が低下することも明らかにしました。歯周病の予防や治療は、インフルエンザを発症したときの症状軽減や治療効果を高めるうえでも大切といえます。
歯周病菌が増えると、インフルエンザウイルスの感染能力が高まり、インフルエンザの症状を悪化させる。 口内で歯周病菌等の細菌が増殖すると、インフルエンザ治療薬の効果が低下する。 |
●そのほかのインフルエンザ予防方法
厚生労働省では、下記の予防方法を推奨しています。うがいに関しては、インフルエンザを予防する効果は科学的に証明されていないため推奨していません。
1)流行前のワクチン接種(発症リスクの軽減と発症時の重症化予防)
2)外出後の手洗い(流水、石けんによる手洗い)
3)適度な湿度の維持(室内の湿度は50〜60%)
4)十分な休養とバランスのとれた栄養摂取
5)人混みや繁華街への外出を控える(高齢、妊婦、体調不良や睡眠不足の方)
6)マスクの着用も有効
石けんによる手洗い
関連するページ 食育・栄養
※1 Abe S, Ishihara K, Adachi M, Sasaki H, Tanaka K,Okuda K: Professional
oral care reduces influenza infection in elderly. Arch Gerontol Geriatr.
2006;43:157-164. ※2 Cell Mol Life Sci. 2015 72(2):357-66. Kamio N、Imai
K、Shimizu K、Cueno ME、Tamura M、Saito Y、Ochiai K. Neuraminidase-producing
oral mitis group streptococci potentially contribute to influenza viral
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