乳がん治療時の口腔の問題

乳がんとは

乳がんは決して珍しい病気ではなく、日本人女性の16人に1人(欧米では8〜10人に1人)がかかる病気です。まれに男性もかかります。

年齢では、30歳代後半から患者さんが増え、50歳前後でピークとなり、その後は減少傾向にあります。患者さんは年々増え続けています。

診察 乳がんは決して珍しい病気ではありません

当クリニックは、国立がん研究センター連携歯科医院、横浜市周術期連携歯科医院に認定されています。



●乳がん治療時の口腔の問題※1

乳がん治療では、抗がん剤治療がおこなわれます。抗がん剤治療によって口腔粘膜炎、口内炎、虫歯、歯周病、ドライマウス(口腔乾燥症)、味覚障害、知覚過敏、感染症を発症することがあります。

また、乳がんの患者さんの47〜85%に骨転移が発症するとの研究報告もあり、骨への転移を防ぐために、ビスホスホネート系薬剤が使用されることが多くあります。

ビスホスホネート系薬剤を服用すると、抜歯、インプラント手術、歯周病の手術などの歯科治療により、顎骨壊死(がっこつえし、あごの骨が死んでしまい、失ってしまうこと)をおこすことがあります

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口腔粘膜炎※2−4

口腔粘膜炎は、口の中の粘膜にあらわれる炎症をいいます。乳がん治療中は、抗がん剤治療の影響により高い確率で発症します(下図:乳がん治療における口腔粘膜炎の発症率)。

多くは軽症から中等度の口腔粘膜炎で、口の中が痛い、血が出る、熱いものや冷たいものがしみる、口の中が渇く、口が動かしにくい、食べ物が飲み込みにくいといった症状がでることがあります。

痛みにより食事や会話がしにくくなり、身体的な苦痛だけでなく、精神的にも大きな苦痛を伴います。抗がん剤の投与1〜2週間後に症状のピークを迎えます。抗がん剤は繰り返し投与されるため、投与の度に発症します。

乳がん治療の多くは入院せずに通院治療でおこなわれます。そのため、診察のときには口腔粘膜炎の症状が改善されていることが多く、症状を過小に評価されることもあります。

研究者 患者数 治療方法 発症率
サンカルロス大学病院
(スペイン) 
736人 FAC療法 53%
744人 TAC療法 69%
テキサスオンコロジー
(アメリカ)
510人 AC療法 45%
506人 TC療法 33%
クロスキャンサーインスティテュート(カナダ) 213人 AT療法 58%
乳がん治療における口腔粘膜炎の発症率 F:5-フルオロウラシル A:アドリアマイシン C:シクロフォスファミド T:タキソテール(ドセタキセル)

抗がん剤治療による口腔粘膜炎(口唇) 軽症の口腔粘膜炎

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●顎骨壊死の発生頻度※5

ビスホスホネート系薬剤は骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の治療にも使用されます。顎骨壊死の発生頻度は、骨粗鬆症よりもがん治療時のほうが高い傾向が見られます。

「骨吸収抑制薬関連顎骨壊死の病態と管理:顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2016」(日本口腔外科学会ほか)によると、がん患者の顎骨壊死の発生率は1.5%とされています。

日本口腔外科学会の全国調査(2011〜2013年調査、2015年12月発表)では、調査期間中に4797例のビスホスホネート系薬剤による顎骨壊死が報告され、原因となった病気の1/4が乳がんでした。

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●乳がん治療と歯科治療

口腔粘膜炎や顎骨壊死の予防のためには、口の中の細菌数を減らし、感染しにくい環境をつくることが大切です。そのため、乳がん治療前に虫歯や歯周病の治療を終え、歯のクリーニング(歯の清掃、PMTC)をおこないます。

診察 歯のクリーニング

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※1 Giuseppe Altavilla,et al:Bisphosphonates and Osteonecrosis of the Jaw :Multidisciplinary Approach Use of Bisphosphonates in Oncology 23-39 Springer-Verlag ※2 Martin,etal. Adjuvant docetaxel for node-positive breast cancer. N Engl J Med. 352(22):2302-13.5 ※3 J Clin Oncol. 24(34):5381-7. Phase III trial comparing doxorubicin plus cyclophosphamide with docetaxel plus cyclophosphamide as adjuvant therapy for operable breast cancer.  ※4 Nabholtz et al. Docetaxel (Taxotere) plus doxorubicin-based combinations: the evidence of activity in breast cancer. J Clin Oncol. 21(6):968-975(12).  ※5 顎骨壊死検討委員会(日本口腔外科学会、日本歯周病学会、日本歯科放射線学会ほか) 骨吸収抑制薬関連顎骨壊死の病態と管理:顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2016 ほか


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