口唇口蓋裂

●口唇口蓋裂とは

口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)とは、口唇、口蓋(口の天井)、上あごの歯肉にさけ目がみられる生まれつきの病気です。以前は兎唇、みつ口、口さけといわれ、見た目の問題から母親が自殺を考えるほどの精神的ストレスがありましたが、現在では治療方法が確立されています。

口唇から鼻にかけての部位にさけ目があるのを口唇裂口蓋にさけ目があるのを口蓋裂口唇から口蓋にかけてさけ目があるのを口唇口蓋裂といいます。

日本では500人に1人の高い頻度で生まれ、口唇口蓋裂は男性に多く、口蓋裂は女性に多い傾向にあります。原因は不明なことが多く、超音波検査により胎生20〜30週前後に診断されることもあり、その頻度は増加傾向にあります。

    
左から片側口唇裂、両側口唇裂、口蓋裂



合併症

口唇口蓋裂は単独で発症することが多いものの、他の病気を合併することもあります。合併する病気としては心臓病(心室中隔欠損症、ファロー四徴症)、舌小帯短縮症、顔面神経麻痺、耳の病気(副耳、耳介変形)などがあります。

症候群の一つの症状としてあらわれることがあり、ピエール・ロバン症候群、ダウン症候群、22q11.2欠失症候群、トリーチャー・コリンズ症候群、第1第2鰓弓症候群などがあります。

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●カネミ油症と口唇口蓋裂

1968年におきた戦後最大の食中毒事件といわれるカネミ油症では、市販の米ぬか油に猛毒のダイオキシン類が混入したことで顔面の色素沈着、頭痛、倦怠感、手足のしびれなどの症状があらわれました。

国がおこなった調査によりダイオキシン類が胎盤や母乳を通して胎児にうつり、口唇口蓋裂の発症率が高いことが明らかにされています。

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治療

治療は口腔外科、矯正歯科、小児歯科、形成外科、小児科、耳鼻咽喉科が連携しておこないます。成長にあわせて各治療をおこない、口唇口蓋裂によっておきる障害である話す、聴く、食べる、飲み込む機能や見た目、かみ合わせ、歯並びの改善をおこないます。


1)出生後(哺乳の改善)
唇が割れている場合(口唇裂)は哺乳が可能ですが、口の天井が割れている場合(口蓋裂)は哺乳が難しく、ホッツ型プレートというマウスピースのような装置を使用して哺乳をおこないます。成長にあわせて作りかえをおこない、1歳頃まで使用します。口唇口蓋裂児用哺乳器(ピジョン株式会社)が使用されることもあります。

口唇口蓋裂用哺乳瓶


2)生後3ヶ月(くちびるの手術)
唇が割れてしまったことにより偏った筋肉を手術により整え、唇や鼻を正常な状態にします。


3)1歳〜1歳半(上あごの手術)
口の天井(口蓋)の割れ目をふさぎます。早い時期に手術をおこなうと上あごの成長発育の障害がおこり、手術が遅くなると口の天井が割れた状態での発音ぐせがついてしまい、手術後の発音機能の改善に悪影響が生じます。


4)1歳〜(耳の手術)
口の天井が割れている場合(口蓋裂)は中耳炎など耳の病気になりやすく難聴になるリスクが高いため、鼓膜にチューブを入れる手術をおこなうことがあります。


5)2歳〜(言葉の練習)
口唇口蓋裂のお子さんは話し始めが遅い傾向がありますが、手術により口の機能が改善すると少しずつ話す機能が発達し3歳ころには同年齢のお子さんに追いつくとされています。2歳頃から言語聴覚士により発音の確認をおこない、正常な発音が身につかない場合は発音の訓練をおこないます。

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6)2歳〜(虫歯の予防)
口唇口蓋裂のお子さんは上あごの成長が弱く、歯並びがデコボコして虫歯になりやすい傾向にあります。定期的に歯科に受診するなどして虫歯を予防していきます。

診療

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7)6歳(唇の傷の改善)
口唇の手術の傷あとが目立ったり、唇の変形が大きいときは、小学校入学前に手術をおこない見た目を改善します。


8)7歳〜(歯並び、かみ合わせの改善)
上あごの成長が弱いために受け口になることがあります。上あごの成長を促し、歯並び、かみ合わせの改善をおこないます。

矯正治療

関連するページ  矯正歯科・歯並び  床矯正(上あごの成長を促す矯正治療)


9)8歳〜(上あごの手術)
上あごの骨まで割れ目が見られると、骨がないためその部分には歯は生えることはできず、矯正治療で歯を移動させることもできません。骨を移植するなどして改善します。


10)16歳〜(歯並び、かみ合わせの改善)
永久歯が生えそろっているため仕上げの矯正治療をおこないます。下あごがかなり前に出ているときは手術により改善していきます。

関連するページ  健康保険適応の矯正治療(手術による矯正治療)



18歳以上の問題

口唇口蓋裂の患者さんは、成長が止まる18歳前後から受け口などの手術や治療をおこなうことが多くありますが、18歳以上で医療費の補助を受けるには身体障害者手帳の取得が要件となります。

しかしながら専門医が少ないこともあり、身体障害者手帳の取得者数は7%ほどにとどまっています。18歳以上の医療費負担が大きいのが現状となっています。

この問題を解決するために厚生労働省は2024年5月に「育成医療受給者の実態の把握及び支援に関する有識者会議」(外部サイトにリンク)を立ち上げ検討を始めました。



当クリニックの対応

治療は大学病院や小児専門病院などの高次医療機関で多数の診療科を受診しておこないますが、成長とともに受診する診療科は減り、地域の医療機関に受診することが多くなります。当クリニックでも虫歯の予防、治療等をおこなっています。何かございましたらお気軽にご相談いただけたらと思います。



※当クリニックへのアクセスについては、下記のページをご覧ください。
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