胃ろう(PEG)
胃ろう(胃瘻)とは

おなかに穴を開けて胃の中に管(チューブ)を通し、この管を通して栄養を摂る方法を「胃ろう」といいます。

胃ろう造設術は、医療技術的には簡単で安全にできる処置ですが、欧米先進国では倫理的な問題から殆どおこなわれていません。日本は「胃ろう大国」と言われ、2000年前後から急速に普及し、現在40万人以上が胃ろうを設置しているとされています。

胃ろうは、飲みこみ障害(嚥下障害)があり、これが原因で肺炎(誤嚥性肺炎)を頻繁におこすときに、医療機関や施設から勧められることが多い傾向にあります。入院期間短縮のため、食事介助に時間と労力がかかるため等の理由により、胃ろうを勧める医療機関や施設もあります。


胃ろうの仕組み 胃瘻の仕組み

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胃ろう造設とご家族※1

胃ろうを造設した人の68%は、本人の意思決定能力がありません。本人の意思決定能力があるのは、27%にとどまります。胃ろう造設の大半は、家族の意思によって決められるため、胃ろうを造設するか悩む家族も多くいます。

本人の意思決定能力がない原因としては、認知症が49%、脳梗塞の後遺症が35%、その両者が9%などとなっています。



胃ろうの利点

胃ろうを設置することにより、(1)飲みこむ能力(嚥下能力)の落ちた人が、飲みこむことなく食事を摂ることができる、(2)誤嚥のリスクが減る、(3)十分な栄養を摂取できる、(4)寿命が延びる、(5)食事介助の負担が軽くなるという利点があります。

胃ろうを設置しても口から食べることが全くできないのではなく、胃ろうと経口摂取を併用することもできます。

誤嚥のリスクについては、唾液や栄養剤の逆流による誤嚥は避けられないため、胃ろうを設置しても肺炎(誤嚥性肺炎)をおこすことはあります。

寿命については、1~2年延命できる、寿命は変わらない等の否定的な研究報告も多くありますが、胃ろうによって口から食べていたときよりも十分な栄養を摂取できるため、全身状態が改善したり、肌のつやが良くなったりすることは多いようです。

※誤嚥(ごえん):食べ物や唾液が食道ではなく、誤って気管、肺に入ってしまうこと。



胃ろうの欠点(胃ろうの問題点)

胃ろうの設置には、(1)食事の楽しみがなくなる、(2)胃ろう設置部が感染しやすい、(3)のどの筋肉を使用しなくなることにより、誤嚥のリスクが高まる、(4)倫理的な問題があります。

胃ろうに対する研究が日本より先におこなわれ、研究が進んでいる欧米先進国では、胃ろうに否定的な意見が主流となっています。アメリカ・アルツハイマー協会は「アルツハイマー末期で摂食・嚥下障害になった患者さんに、利益をもたらすという医学的証拠はない」との指針を出しています。

ヨーロッパ静脈経腸栄養学会は、「胃ろうが誤嚥性肺炎の発生を減少させ、患者さんの生活の質を改善させるという医学的証拠はない」としています。



胃ろうの最近の傾向

2012年に日本老年医学会は高齢者の胃ろうについて、家族や医療関係者との間で話し合いの中で結論を出すことが望ましいとする指針を作成しました。最近では胃ろうを拒否する人や家族も増えています。


自宅や施設では、歯科医師、歯科衛生士などの医療スタッフにより、口から食べるための訓練(摂食・嚥下訓練)や誤嚥性肺炎を防ぐための口腔ケアが盛んにおこなわれています。

医療機関では、医師、看護師、歯科医師、歯科衛生士、言語聴覚士、管理栄養士等が摂食・嚥下サポートチーム(SST)を組織して、口から食べるための訓練(摂食・嚥下訓練)をおこなっている病院も増えています。


また、虫歯や歯周病の治療、入れ歯の作製等の歯科治療により「かむ機能」は回復し、食事が摂れるようになったり、むせが減ることが明らかにされています。

胃ろうに関する著名な本「胃ろうよ さようなら -明日はおスシを食べにいこうー」では、胃ろうから脱するには、歯科治療が必要不可欠であることを説いています。


胃ろうよ さようなら 「胃ろうよ さようなら -明日はおスシを食べにいこうー」(筒井書房)

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※ 第8回民医連学術運動交流集会、医療倫理セッション資料



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