●誤嚥性肺炎の予防
誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)の予防には、自分自身ができるもの、歯科医院など医療機関でおこなうものがあります。
1)食べやすい姿勢での食事
姿勢のとり方によって食べ物が飲み込みやすくなるので、誤嚥を防ぐのに有効です。
特にベットで食事をする場合は、寝たままではなく、体を起した状態で食事をすることが大切です。また、夕食後は間食をせず、就寝時には胃を空っぽにしておくと、睡眠中の誤嚥を防ぐことができます。
なるべく体を起こした状態で食事をします
関連するページ 誤嚥性肺炎 誤嚥性肺炎 Q&A
2)調理方法の工夫
パサパサしたもの、さっとのどを流れるものは、のどの反射が起きる前に気管に流れ込んでしまうために、誤嚥のしやすい食べ物です。逆にベトベトするような食べ物は、のどに付着、残留し、呼吸の際に吸い込んでしまうため、誤嚥のしやすい食べ物です。
食べ物を煮込んだり、きざみ方を変えるなどして調理方法を工夫すると、誤嚥をある程度防ぐことができます。また、とろみをつけたり、ゼリー状にする食品(増粘剤、ゲル化剤)を使用してもよいでしょう。
食べやすい形に調理します
関連するページ
食べ物が飲み込みにくいことはありませんか? 食べ物が飲み込みにくい方の食事について
3)口腔ケア(口の中の清掃)
歯科医師や歯科衛生士による専門的な口腔ケアは、口の中の細菌数を減らし、誤嚥性肺炎の発症が減少します。口の中の細菌数を減らすことで、誤嚥をおこしても肺炎をおこしにくい口の中の環境にしていきます。
口腔ケアは歯科医院で、あるいは訪問歯科診療として自宅や施設(老人ホームなど)でおこないます。
定期的な歯科医師や歯科衛生士による口腔ケアも大切です
関連するページ 口腔ケア 口腔ケア Q&A 口腔ケアの効果
4)摂食嚥下訓練
摂食嚥下訓練は、食べる機能、飲み込む機能の維持、改善するためのリハビリです。リハビリにより誤嚥をおこしにくくします。
関連するページ 摂食嚥下障害 摂食嚥下訓練 摂食嚥下障害 Q&A
5)睡眠の工夫
睡眠中は胃酸が逆流しないように、頭部を少し高くして寝るようにします。胃食道逆流症(逆流性食道炎)であれば、薬の服用するなどの治療をおこないます。
睡眠中は誤嚥しやすくなるだけでなく、口の中の細菌が繁殖しやすくなります。寝る前にはしっかり歯をみがいて、口の中の細菌を減らし、誤嚥をおこしにくい環境にします。
関連するページ 胃食道逆流症(逆流性食道炎)
6)そのほか
入れ歯の手入れ、薬の服用、睡眠薬や安定剤の服用を減らす、禁煙、睡眠中の無呼吸(睡眠時無呼吸症候群)や低位舌の改善なども誤嚥性肺炎の予防に効果があります。
毎日しっかり入れ歯の清掃をおこないます
関連するページ タバコ いびき・睡眠時無呼吸症候群 低位舌
●口腔ケアによる肺炎の予防効果※1,2
昭和大学、広島大学、東北大学の研究者らが全国11ヶ所の特別養護老人ホーム入所者366人を対象に調査をおこないました。
歯科医師や歯科衛生士らが歯のクリーニングなどの口腔ケアをおこなったグループは、口腔ケアをおこなわず従来の方法で口の中を清掃していたグループに比べて、肺炎などによる発熱の発生、肺炎の発症、肺炎による死亡が、それぞれ48%、42%、56%も減少しました。同様の調査結果は、数多くの研究者によって報告されています。
口の中の清掃による肺炎の予防効果※1
アメリカ・ニューヨーク州立大学の研究者が調査(23808人)をおこなったところ、口の中が汚れている人ほど誤嚥性肺炎などの呼吸器の病気を発症しやすくなるという結果となりました。
また、口の中が汚れている人は口の中がきれいな人に比べて、誤嚥性肺炎などの呼吸器の病気を発症するリスクが
4.5倍(オッズ比)も高いという結果となりました。
誤嚥性肺炎など、呼吸器の病気を発症するリスク(オッズ比)※2
※口腔衛生指数(OHI-S、Simplified oral hygiene index)
口の中の汚れを評価する指数。歯についた歯垢(しこう)と歯石の状態をみます。最高点は6。
関連するページ 肺炎をおこしやすい方の口の中の特徴 歯垢と歯石
●
入れ歯の使用による肺炎の予防効果※1
全国11ヶ所の特別養護老人ホーム入所者、歯が全くない158人を対象に2年間にわたっておこなった調査では、入れ歯を使用していない人の肺炎発症率は29%だったのに対し、入れ歯を使用している人の肺炎発症率は11%となりました。
入れ歯を使用することで咬める機能を維持できると、肺炎の発症を防ぐこともできます。また、入れ歯を使用すると、食物による窒息事故を防ぐこともできます。
歯が全くない人の肺炎発症率
関連するページ 入れ歯
※1 米山武義,吉田光由,佐々木英忠,橋本賢二、三宅洋一郎,向井美惠,渡辺誠,赤川安正:要介護高齢者に対する口腔衛生の誤嚥性肺炎予防効果に関する研究.日本歯科医学会誌,20:58-68,2001.
※2 Scannapieco FA, Papandonatos GD, Dunford RG Associations between
oral conditions and respiratory disease in a national sample survey population.
Annals of Periodontology 3, 251-256, 1998.
※当クリニックへのアクセスについては、下記のページをご覧ください。
交通アクセス・駐車場案内図(横浜市都筑区、港北区など近隣よりご来院の方)
青葉区・宮前区からのご来院(横浜市青葉区、川崎市宮前区からご来院の方)
小田急線沿線からのご来院(東京都町田市、川崎市麻生区、多摩区などからご来院の方)
横浜線沿線からのご来院(横浜市緑区、相模原市などからご来院の方)
南武線沿線からのご来院(川崎市中原区、高津区などからご来院の方)
広域路線図 広域道路地図(神奈川県、東京都からご来院の方)
新幹線・飛行機でのご来院(神奈川県、東京都以外からご来院の方)
関連するページ 歯周病 がん治療前・治療後の歯科治療 訪問歯科 認知症