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運動療法が推奨される口内の病気
口内の痛みを改善するために運動療法が有効なことがあります。痛みには急性痛と慢性痛があり、運動療法が効果的なのは慢性痛です。顎関節症、神経障害性疼痛、口腔灼熱症候群などの病気が運動療法の適応になります。
一方で、虫歯や歯周病の痛みなどの急性痛に対しては、運動療法は症状を悪化させることがあるため適応になりません。原因を治療することで痛みが軽減されます。
日本では歯科分野での痛み改善のための運動療法は、一部の治療を除いてほとんど普及していませんが、欧米ではあごの関節や舌の痛み、抜歯後の長引く痛みなどの治療において、歯科医師、理学療法士らが局所と全身の運動療法をおこない効果を上げています
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1)運動療法が推奨される病気(慢性痛)
顎関節症/
疲労した筋肉を原因とした歯痛(筋・筋膜性歯痛)/関節リウマチを原因とする口内の痛み/
口腔灼熱症候群(舌痛症)/
神経障害性疼痛(三叉神経ニューロパチー)/
線維筋痛症/ストレスなどによる口内の痛み
2)運動療法が推奨されない病気(急性痛)
虫歯/
歯周病/
親知らずの腫れ/歯の破折
3)運動療法が推奨されない病気(慢性痛)
三叉神経痛/
舌咽神経痛/
巨細胞性動脈炎/
帯状疱疹後神経痛
運動療法をおこなうときは、歯科医師、医師らの指導のもとでおこなうようにしてください。
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運動療法の効果
慢性痛では痛みが長期間続きます。痛みによる不安や恐怖感が強いと、外出を控えて引きこもりがちになったり、不眠になることもあります。このような生活が続くと体力や筋力が衰えていき、気分も憂うつとなり、うつ症状がおきることもあります。この状態が続くと、痛みをさらに強く感じてしまいます。
運動には痛みを和らげるホルモンを分泌する効果があり、慢性痛には一定の効果があります。また、顎関節症などの慢性痛では、動きを悪くする筋肉、靭帯などにストレッチやマッサージをおこなうことによって細胞が活性化され、痛みが軽減されます。
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運動療法の方法
以前は痛みがあると安静にするのがよいと考えられていましたが、現在では慢性痛は安静にしないで、耐えられる痛みであれば積極的に動かすことで、痛みが減少するとされています。運動療法をおこなうときは、歯科医師、医師らの指導のもとでおこなうようにしてください。
1)局所の運動療法
痛みを感じている部位におこなう運動療法は、多少痛みを感じても耐え得る程度の強さで、なるべく長くおこないます。ストレッチ、マッサージ、口を開ける訓練をおこないます。
以前は局所の運動療法のみをおこなうことが多かったものの、あごの関節が痛い、舌が痛いといった局所の痛みであっても、局所の運動だけでなく、全身の運動も合わせておこなっていくと効果が高まります。
2)全身の運動療法
全身の運動療法は、活動する筋肉の量が局所の運動療法よりも多くなるため、心地よいと感じる程度の運動をコツコツと、毎日継続していくことが大切です。
慢性痛の患者さんは、全く運動しない、運動をやり過ぎるといった両極端の人が多く、適度な運動にとどめておくようにします。全く運動せず、自宅で痛みのことばかりを考えていると痛みは増します。逆につらく感じる激しい運動は、ストレスになるだけでなく、炎症を促して痛みが増します。
運動療法については、ウオーキング、ジョギング、水泳、スポーツジムでのトレーニングなどがありますが、どの運動であっても鎮痛効果に差はないとされています。どの運動も1〜2ヶ月間ほど続けると効果があるとされています。
おすすめの運動
部屋の掃除/ウオーキング/犬の散歩/ヨガ/太極拳/ラジオ体操/マインドフルネス/自分の好きな運動 ほか