●三叉神経とは

頭と顔の感覚は、脳から直接でている左右12対の神経(脳神経)がつかさどっています。三叉(さんさ)神経は脳神経の一つで、痛み、触った感覚、熱さや冷たさの感覚を感じ取っています。

名前は、三叉神経が目や鼻の周辺に分布する眼(がん)神経上あご全体に分布する上顎(じょうがく)神経下あご全体に分布する下顎(かがく)神経の三つの神経に分かれることに由来します。

神経分布 三叉神経

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●三叉神経痛とは

三叉神経痛は三叉神経の障害によっておきる神経痛をいいます。年齢では50歳以上に多く(平均年齢は55歳)、10万人あたりの年間発症率は4〜10人と比較的多く、男女比は1:7と女性に多い病気です。

鋭く強烈で、瞬間的な痛み(電撃痛、1秒〜2分間の痛み、平均7秒程度の痛み)が、鼻の横や下あごの奥歯に生じるため、ほとんどの人は最初に歯の痛みを訴えて歯科に受診します。

歯がしみる 歯がしみることもあります

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●三叉神経痛の特徴

1)診断
瞬間的な痛みを「歯がツーンとしみる」、「歯がビリッと痛む」、「虫歯の痛みがある」と表現することが多いため、虫歯や歯の神経の炎症(歯髄炎)、知覚過敏と診断されやすい傾向があります。なかなか診断がつかず、銀歯などのつめ物の交換がされたり、歯の神経を取ったり、時には抜歯に至ることもあります。

入れ歯を使用しているときは「入れ歯があたって痛い」と訴えることがあり、入れ歯の不具合が原因と診断されることもあります。

ドイツの研究者の報告では、82%の患者さんが歯科医院に受診したものの、66%が三叉神経痛と診断されずに不必要な歯科治療がおこなわれていました。

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2)痛みがあらわれる部位
上顎神経もしくは下顎神経、あるいはその両方の神経が分布する部位で痛みが生じます。眼神経が分布する部位で痛みが生じることはまれです。眼神経が分布する部位で激痛がある場合は、群発頭痛、短時間持続性片側神経痛様頭痛発作(SUNHA)、帯状疱疹のことが多い傾向にあります。

神経は左右対照に別々に分布しているため、左右同時におきることはほとんどありません。


痛みがあらわれる神経の部位
上顎神経 4割/下顎神経 3〜4割/上顎神経と下顎神経 1〜2割/他 1割

痛みがあらわれる部位
鼻の横/口唇/頬/オトガイ/ほうれい線/下あご/歯/歯肉/口蓋(口の天井)/舌/目/まゆ毛

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3)痛みの特徴
瞬間的な激痛のため、痛みが続く時間は長くても数秒です。症状が悪化すると、瞬間的な痛みが何十分と続くと感じることがありますが、この場合も痛みがない時間があります。

歯みがき、ヒゲそり、洗顔、食事などで、決まった一ヶ所に触ると痛みが生じることが多く、症状が悪化すると話したり、食事をすることが困難になります。


痛みが生じる行為
顔をやさしく触る/話す/かむ/水を飲む/飲み込む/舌を動かす/歯みがき/ヒゲそり/洗顔/鼻をかむ/あくびをする/笑う/声をあげる/化粧をする/髪の毛をとかす/髪を洗う

洗顔 歯みがき、洗顔で特定の部位に触れると痛みが生じることがあります


4)寛解期
寛解期(かんかいき)と呼ばれる、全く痛みが生じない時期があります。寛解期は数ヶ月から数年続きますが、しばらくすると再び痛みが再発し、再発を繰り返すたびに寛解期は短くなっていきます。

歯の神経を抜いたら治った、歯を抜いたら治った、入れ歯の調整をしたら治ったという人がいますが、これは数週間の治療期間中に寛解期に入っただけで、歯科治療で治ったわけではありません。



三叉神経痛の原因

三叉神経痛は、主に加齢によって血管が硬くなり蛇行して、三叉神経を圧迫するために発症すると考えられています。ごくまれに脳腫瘍、多発性硬化症、血管の奇形などの病気によって発症することもあります。

神経は電線と同じで、痛みや温度などの刺激を電気信号に変えて脳に送っています。電線のため、電気信号が漏れないように髄鞘(ずいしょう)と呼ばれる絶縁体(電線の金属線を覆うビニルにあたるもの)で覆われています。

三叉神経痛は硬くなった血管が圧迫することによって髄鞘がすり減り、そこから漏れた電気信号がショートしてしまい、痛みがおきると考えられています。

電線 三叉神経痛は電線がショートした状態とされています

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三叉神経痛の診断基準

以下を満たすと三叉神経痛と診断されます。

群発頭痛の診断基準(国際頭痛分類第3版)

A.三叉神経枝の1つ以上の支配領域に生じ、三叉神経領域を超えて広がらない一側性の発作性顔面痛を繰り返しBとCを満たす。

B.痛みは以下のすべての特徴をもつ
1.数分の1秒〜2分間持続する
2.激痛
3.電気ショックのような、ズキンとするような、突き刺すような、または鋭いと表現される痛みの性質

C.障害されている神経支配領域への非侵害刺激により誘発される。

D.ほかに適切なICHD−3の診断がない。



●三叉神経痛の治療

三叉神経痛の治療は最初に薬の服用による治療がおこなわれ、効果が得られなくなったときに手術などの治療がおこなわれます。


1)薬物療法
カバマゼピン(商品名:テグレトールほか)という薬が特効薬です。三叉神経痛の治療では最もおこなわれいる治療です。薬を服用すると1〜2日で痛みが止まります。1日100〜200mgから始めて、効果をみて増量していきます。

長期に服用すると効果が弱くなり、薬の量を増やす必要がでてきます。効果が得られるのは平均5〜6年とされ、カルバマゼピンの服用が1日500〜600mgになったときに手術に移行することが多い傾向があります。薬の増量はめまい、ふらつき、吐き気などの副作用をおこすことがあります。


三叉神経痛の治療で使用されることのある薬
カルバマゼピン(テグレトール)/オクスカルバゼピン(オクノベル)/バクロフェン(リオレサール、ギャバロン)/ガバペンチン(ガバペン)/プレガバリン(リリカ)/ミロガバリン(タリージェ)/アミトリプチリン(トリプタノール)/ゾニサミド(エクセグラン) ほか

薬 最初の治療としてテグレトールの服用をおこないます

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2)微小血管減圧術
三叉神経痛は神経が血管に圧迫されているためにおきる病気のため、手術によって血管と神経を離すと症状は劇的に改善されます。寛解期が短くなったときは、多くは薬を服用し続けていくか、手術をおこなうかの選択となります。


3)放射線治療
放射線治療は、高齢などで手術ができない人などに対しておこなわれます。ガンマナイフという放射線装置を使用して、放射線を三叉神経に照射することにより治していきます。健康保険外の治療のため、50〜80万円ほどの費用がかかります。


4)神経ブロック(星状神経節ブロック 三叉神経ブロック)
神経ブロックは神経周辺もしくは神経に局所麻酔をすることで、痛みのために緊張状態にあった神経の活動が抑えられ、血管が広がって血の流れがよくなり、筋肉の緊張も和らぐことで痛みが改善します。数回から20回ほど注射をおこなうことで一定の効果が得られますが、しびれが生じたり、再発が多いのが欠点です。


5)高周波熱凝固法
神経の近くに針を刺して処置をおこないます。高周波の電磁波により熱を発生させ、神経の働きを抑える方法です。神経ブロックに比べると治療をこなっている医療機関は限られるものの、神経ブロックよりも効果が長く、数か月から2年ほど効果が続きます。



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