三叉神経損傷(三叉神経麻痺) 横浜・中川駅前歯科クリニック
三叉神経損傷(三叉神経麻痺)
●三叉神経とは

頭と顔の感覚は、脳から直接でている左右12対の神経(脳神経)がつかさどっています。三叉(さんさ)神経は脳神経の一つで、触った感覚、熱さや冷たさ、痛みの感覚を感じ取っています。

名前は、三叉神経が目や鼻の周辺に分布する眼(がん)神経、上あご全体に分布する上顎(じょうがく)神経、下あご全体に分布する下顎(かがく)神経の三つの神経に分かれることに由来します。

神経分布 三叉神経

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●三叉神経損傷(三叉神経麻痺)とは

三叉神経損傷(さんさしんけいっそんしょう)とは、歯科治療時の麻酔、歯の根の治療、抜歯、インプラント手術、外傷や炎症などによって、三叉神経が損傷を受けた状態をいいます。

下あごの親知らずの抜歯によるものが半数以上を占め、2000年代以降はインプラント手術によるものが増加しています。神経に近い部位での治療は、歯科医師の技量や手技に全く問題はなくても神経損傷が避けられないことがあります。

下顎神経が圧倒的に多く、神経の枝分かれで下あご、口唇の感覚に関与する「下歯槽神経(かしそうしんけい)」、舌の感覚に関与する「舌神経(ぜつしんけい)」が損傷を受けることが多く、感覚が鈍い、感覚がない(麻痺)、ビリビリしびれる、といった症状があらわれます。上顎神経、眼神経はほとんどありません。

女性が多く3/4を占め、下あごの親知らず抜歯では30〜50歳代の女性が多い傾向があります。2割ほどの人は、神経障害性疼痛として長期にわたって痛みが生じるほか、かみにくい、話しにくいといった症状があらわれます。


三叉神経損傷の特徴
下顎神経(下歯槽神経、舌神経)が圧倒的に多い/女性が多い/治療に全く問題がなくても生じることがある/2割ほどは症状が長期にわたって続く


三叉神経損傷の原因
親知らずの抜歯(下あごの親知らず抜歯が圧倒的に多い)/歯の根の治療(根管治療、多い)/親知らず以外の抜歯/インプラント手術(多い)/歯周外科手術/歯列矯正治療の手術麻酔/下顎骨骨折(交通事故、スポーツによる外傷)/骨髄炎/顎骨腫瘍/口腔がん手術(舌がんほか)/美容外科手術/炎症/炎症の治療(膿瘍消炎術) ほか


三叉神経損傷の症状
違和感(皮膚が冷たい、皮膚が硬い、あごが重い、腫れている気がする、重たい動かない感じがする、濡れている感じがする、何かにつねられている感じがする、ピリピリする)/感覚の低下(感覚が鈍い)/あごと唇の感覚がない/しびれ(非常に多い)/痛い/話しにくい(舌神経が多い)/食べにくい(下歯槽神経が多い)/口からものがこぼれる/味がしない、味がおかしい(味覚障害) ほか

痛み

当クリニックでは、三叉神経損傷のご相談、治療をおこなっています。また、歯科大学病院など高次歯科医療機関をご紹介させていただくことも可能です。お気軽にご相談ください。

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下あごの親知らずの抜歯と神経損傷

下あごの親知らずの抜歯では、下顎神経の枝分かれである下歯槽神経の一時的な障害は0.2〜2%、永久的に残る障害は0.3〜1.7%舌神経は一時的な障害は1〜2%、永久的に残る障害は0〜1%とされています。



三叉神経損傷の経過

三叉神経を損傷しても軽度であれば感覚が鈍くても自然に治るとされています。神経を損傷して神経を損傷してから1ヶ月を過ぎても改善しない場合は完治は難しい傾向にあります。

かかりつけの歯科医院もしくは歯科大学病院や病院の麻酔科、口腔外科、ペインクリニックにて早い時期に検査、治療をおこなうことが大切です。



三叉神経損傷の検査

三叉神経損傷1〜3ヶ月後に検査をおこないます。下歯槽神経、オトガイ神経は触った感覚(触覚)、温度の感覚(温覚)、痛みの感覚(痛覚)を、舌神経ではこれらに加えて味覚を調べます。感覚がどの程度、感じなくなっているかを調べます。

感覚検査は2018年に精密触覚検査(SWテスト)が健康保険適応になりました。機能検査として知覚神経活動電位導出法(SNAP)、形態検査として感覚の診断はできないもののレントゲン、CT、MRIを撮影することがあります。

検査

精密触覚検査(SWテスト)は、2018年に健康保険適応になりました。当クリニックは神奈川県の医療機関では最初に認可を得て、治療をおこなっています(受理番号:(精密触覚)第1号)。お気軽にお問い合わせください。

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●神経損傷の分類

神経損傷の分類の一つとして「セドンの分類」があり、下記はこの分類を簡略したものです。神経損傷後1〜2週間は診断がつかないことがあり、まずはビタミン剤(メコバラミン)の処方から始まることが多い傾向にあります。


1)一時的な神経障害
神経線維(軸索)が切れていない一時的な障害で、数日から4ヶ月以内に完全に回復します。レントゲン写真では問題ないことが多い傾向があります。

2)神経線維(軸索)の断裂
神経線維(軸索)は切れているものの神経は完全には切れていない状態で、原因が取り除かれると数ヶ月から1年ほどかけて少しずつ回復することがあります。

3)神経断裂
神経が完全に切れている状態で、自然に治ることはなく外科手術(神経修復術)の適応になります。



三叉神経損傷の治療

三叉神経損傷の治療は状態に応じて歯科医院や高次歯科医療機関(歯科大学病院、病院口腔外科など)でおこなわれます。神経が再生する場合もあるため手術は3ヶ月ほど様子をみてからおこないますが、6ヶ月以上たってからの手術は経過が悪い傾向があります。また、若い人の方が経過がよい傾向があります。


1)軽度
軽度の神経損傷であれば数日から数週間で改善する傾向があり、神経の再生を促すためにビタミン剤(メコバラミン)、ステロイド剤(損傷1週間後から)、ATP製剤(アデノシン三リン酸)などが使用されます。

必要に応じて麻酔科、ペインクリニック科にてブロック注射(星状神経節ブロック、三叉神経ブロック)、光線療法(赤外線照射)などがおこなわれます。


2)中等度
数ヶ月から1年で改善する傾向がありビタミン剤(最大で6ヶ月後まで)やステロイド剤のほかブロック注射、光線療法がおこなわれます。

必要に応じて外科手術(神経修復術)がおこなわれ、部分的に切れた神経をつないだり、人工神経を入れるなどしていきます。2016年から神経再生誘導チューブが歯科で保険適応され手術の選択肢が増えました。手術によってすぐに神経が回復するわけではなく、全身麻酔、入院が必要となるため、最初の治療は手術ではなく、他の治療を優先しておこないます。

手術


3)重度
神経が完全に切れてしまった場合は重度となり1)、2)の治療をおこないます。手術をおこなう場合は、神経損傷から6ヶ月以内におこないます。痛みが長引く場合は、神経障害性疼痛に対する治療として薬(プレガバリン、ミロガバリン、ガバペンチン、アミトリプチリン、イミプラミンほか)を服用して改善をはかります。

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