●酸蝕歯とは※1
毎日摂取している飲食物には、酸が含まれています。その酸によって溶けて、薄くなった歯を「酸蝕歯(さんしょくし)」といいます。
歯はph5.5以下の酸で溶けます。通常は食飲物などの酸によって歯が溶けても、唾液によって歯は修復されるので問題はありませんが、誤った食生活などによって酸蝕歯になります。酸蝕歯になると、歯が欠ける、歯がへこむ、しみるなど、下記の症状があらわれます。
酸蝕歯の症状
歯本来の美しさがなくなる/歯のかみ合わせの面がへこんだようになる/前歯が欠けたような状態になる/歯がしみる(知覚過敏)/つめ物がとれる/歯の最表層が薄くなり、歯が黄ばんで見えるようになる/虫歯 ほか
酸蝕歯(矢印の部分が溶けています)
※酸蝕が原因ではなく、歯ぎしりや虫歯によって歯が欠けたり、しみたりしていることもあります。
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●酸蝕歯の発生頻度
酸蝕歯は男女、年齢を問わずに発生し、大規模な調査では日本人の4人に1人が「酸蝕歯」であると報告されています。軽度では歯科医師でも気付かないことがあり、自分自身では中等度から重症になるまで気付かないことが多い傾向にあります。
50歳代までは歯の表層の「エナメル質」のみに症状が限定された酸蝕歯が多く、60歳代以上ではエナメル質だけでなく、歯の内面の「象牙質」まで症状が進んだ酸蝕歯が多い傾向にあります。
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●酸蝕歯の原因
酸蝕歯の原因としては、清涼飲料水、かんきつ類など酸性度の高い飲食物の摂取、メッキ工場、バッテリー工場など酸を取り扱う職場、胃食道逆流症(逆流性食道炎)や摂食障害(拒食症、過食症)、アルコール依存症、ドライマウス(口腔乾燥症)などの病気が原因としてあげられます。
職場環境を原因とする酸蝕歯もあります
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●酸蝕歯のリスク要因※2
食生活、病気などが酸蝕歯の発症リスクを高めます。フィンランド・ヘルシンキ大学の研究者がおこなった調査では、酸蝕歯になるリスク(オッズ比)は、週に1本以上スポーツドリンクを飲む人で4倍、重度のドライマウス(口腔乾燥症)の人で5倍、1日2個以上のかんきつ類を摂取する人は37倍にもなりました。
酸蝕歯を引きおこすリスク(オッズ比)
ドライマウス:重度のドライマウス/清涼飲料:週に4〜6本以上/スポーツドリンク:週に1本以上/リンゴ酢:週に1本以上/おう吐:週に1回以上/かんきつ類:1日に2個以上
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●酸蝕歯の予防と治療
酸性の食品を飲食したら必ず酸蝕歯になるわけではありません。食生活、歯みがき方法を工夫することにより、多くは予防されます。
口の中で長く飲み物を置かず、ストローを口の奥にあてて飲むなど、飲み方を工夫するほか、摂取頻度を少なくしたり、寝る前に飲まないなど、摂取時間を考慮する必要があります。
強酸性の飲食物の摂取後は、歯の表面が酸によって軟らかくなっています。摂取直後に歯をみがくと、歯が簡単に擦り減ってしまうので注意が必要です。また、歯がしみる「知覚過敏」の原因にもなります。強酸性の飲食物の摂取後はお茶や水などで口の中を中和して、1時間以上たってから歯をみがくようにします。
酸蝕歯の予防には、歯科医院で定期的に検診をおこない、歯の表面に異常がないかのチェックを受けることも大切です。必要に応じて予防処置(歯のクリーニングなど)をおこなったり、歯みがき方法、飲食物の摂取方法などのアドバイスを受けることも欠かせません。治療は、酸によって溶けた部分を修復していきます。
酸蝕歯の予防と治療
酸蝕歯の予防 | 酸蝕歯の治療 | |
自宅 | 食生活の工夫、改善 酸蝕歯予防の歯みがき粉の使用 |
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歯科医院 | 歯のクリーニング(清掃) フッ素塗布 予防方法のご説明 |
酸によって溶けた部分の修復 |