医療依存度の高いお子さん(医療的ケア児)の歯科的問題
医療技術の進歩によって、人工呼吸器、経管栄養といった高度な医療を常時必要とするお子さん(医療的ケア児)は急増しています。2005年から2015年までの10年間で2倍も増加しており、歯科でも対応が求められています。

医療依存度の高いお子さんの歯科的問題と対処方法としては、下記があげられます。


●歯科未受診

医療依存度の高いお子さんは、病態が安定せず、入退院を繰り返すことがしばしばあります。そのため、どうしても歯科への受診が後回しになりがちになり、歯科受診率が低い傾向にあります。

歯科医院に受診しても、医療機器を持ちこんでの通院することが大変なため、受診が途絶えがちになります。また、保護者の方は呼吸の管理、痰の吸引などお子さんに付きっ切りであることが多く、兄弟の歯科受診率も低い傾向があります。

このような状況を受けて、国も対策をおこなっています。2018年の診療報酬改定では、訪問歯科診療の対象となるお子さんの口の機能向上、重症化予防に対する診療に、初めて健康保険が適応になりました。

2021年6月には医療的ケア児支援法(医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律)が国会で成立、施行されました。この法律により支援がより強化されます。

神奈川県立こども医療センター

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●感覚過敏

早産、低体重で生まれたお子さんは、人工呼吸器での生活、指しゃぶりや人に触られるなどの感覚の体験不足により、感覚過敏が強い傾向にあります。感覚過敏があると、身体に触られるのを嫌がる傾向があります。

口唇や頬の粘膜、歯肉に感覚過敏があることも多く、歯みがきを嫌がるために口内が汚れたり、歯肉が腫れたりするほか、口から食べることが困難になることがあります。また、口内の汚れは肺炎(誤嚥性肺炎)の原因となることもあります。

感覚過敏を軽くしていくためには、リハビリテーション(脱感作)が必要となります。早い時期からのリハビリテーションが重要ですが、難しいことも多くあります。歯科医師、歯科衛生士と相談しながら、無理のない範囲で始められるのがよいでしょう。

保育器

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動揺歯(グラグラした歯)

5〜12歳頃は、乳歯から永久歯に生え変わる時期です。医療依存度の高いお子さんは、抜けた乳歯を誤って飲み込んでしまったり(誤飲)、乳歯が肺に入ってしまったり(誤嚥)、窒息の原因になることもあります。

訪問歯科診療の際に、あるいは近隣のかかりつけの歯科医院で、定期的にグラグラしている歯がないかのチェックをおこないます。必要があれば事前に抜歯をおこなうことで、乳歯の誤飲や誤嚥を防ぎます。

歯の生え変わり

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●歯列不正

生まれたときからの病気や発達の遅れから、歯が生えてくるのが遅かったり、歯の本数が少ないことがあります。てんかん、脳性麻痺をもつ場合は、歯ぎしりによって歯が削れてしまうこともあります。

また、口唇や舌の筋肉の未発達、筋肉の緊張により、歯列不正が多くみられます。

歯列不正は食べかすや汚れがたまりやすく、虫歯や歯周病(歯肉炎)の原因となります。毎日の歯みがきをしっかりおこなうほか、定期的に歯科医師、歯科衛生士による歯のクリーニング(清掃)をおこなうなどして、口内の清潔にしていきます。

歯ブラシ

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歯周病(歯肉炎)

てんかんを発症しているお子さんは多く、難治性のために数種類の抗てんかん薬を服用しているお子さんも多くいます。抗てんかん薬は歯肉が腫れる原因にもなり、十分な歯の清掃が必要となります。

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●ドライマウス(口腔乾燥症)

食べたり、飲み込む機能の障害(摂食嚥下障害)による唾液の減少、歯列不正や開口による口内の乾燥があります。抗てんかん薬、向精神薬の服用は口内の乾燥を悪化させます。

口内が乾燥すると、口内の汚れ、細菌の繁殖、口臭の原因となるほか、医療依存度の高いお子さんは口内の細菌が肺に入りやすく、誤嚥性肺炎をおこしやすい傾向にあります。また、虫歯の発生、歯肉の腫れの原因にもなります。

口周囲の筋肉のトレーニングをおこなうなどして、ドライマウスを改善していきます。

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●栄養

成長期であるものの、肺炎、呼吸不全のリスクなどから、十分な栄養が摂取できていないことが多くあります。人工乳や流動食のために微量元素が不足したり、ビビフィズス菌や乳酸菌が不足して腸内環境が整っていなかったり、水分摂取量が不足していることも多くあります。

管理栄養士、医師、歯科医師らと相談しながら十分な栄養の摂取をおこなっていくことで、十分な栄養を摂取していくようにしていきます。

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当クリニックでは、医療依存度の高いお子さんの歯科治療に対応させていただいております。また、神奈川県立こども医療センター(登録医療機関)、横浜市立大学附属市民総合医療センター(同)、横浜市歯科保健医療センター(在宅療養連携登録医)等の医療機関と連携をおこなっています。ご不明な点等がありましたら、お気軽にお問い合わせください。



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