ウイルスは口や鼻から侵入してきます。新型コロナウイルス感染症の予防のためには、手洗い、マスクの着用のほか、口内を清潔に保つことも大切となります。
歯みがきがしっかりできていなかったり、定期検診を控えていたり、歯周病の治療をそのままにしておくと、口内は汚れ、細菌は繁殖して、ウイルスが体内に侵入しやすくなります。下記はウイルス感染予防のための歯みがき方法です。
●歯みがき
歯みがきは汚れを除去するだけでなく、口内細菌を減らす行為でもあります。
口内細菌はプロテアーゼという酵素をつくり、この酵素は口内やのどの細胞表面のたんぱく質を破壊して、細胞内にウイルスを侵入しやすくします。そのため、虫歯や歯周病を放置していたり、不十分な歯みがきなどで口内が汚れて細菌数が多いと、ウイルスに感染しやすくなります。
感染予防のために、しっかり時間をかけて歯をみがくようにしましょう。
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●歯みがきの回数
感染予防のために歯みがきは重要ですが、回数を増やして雑に何度も歯をみがくよりも、回数が少なくても丁寧に歯をみがいていくほうが、ウイルス感染予防には効果的です。
歯みがきで口内細菌をゼロにすることはできませんが、一度の歯みがきで細菌数を減らすと、再び元の細菌数に戻るまでには一定の時間がかかります。
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●歯みがきをおこなう場所、方法
歯みがき時は唾液を飛ばしてしまいます。無症状であっても新型コロナウイルスに感染していると、唾液中にもウイルスが混入しているため、歯みがきによって周囲の人に感染が広がる可能性があります。
感染予防のために口を閉じて歯をみがく、話をしながらの歯をみがきを避けたり、うがいはそっとするようにします。また、職場や学校では歯みがきの時間をずらしたり、歯みがきをする場所の換気をよくするなど、三密対策をおこなうことも感染予防に効果があります。
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●舌みがき
ACE2(アンジオテンシン変換酵素2)受容体という細胞表面のたんぱく質にくっついて、新型コロナウイルスは細胞内に侵入します。ACE2受容体はのどよりも口内、特に舌に多いとの研究報告もあり、ウイルスは舌の表面からも侵入します。
舌みがきで、舌表面にある死滅した細胞や生きたウイルスを除去していきます。ただし、過度な舌みがきは舌を傷つけてしまい、逆効果となりますので注意が必要となります。
2020年5月追記)
2020年5月5日に放送された「東洋医学 ホントのチカラ 今こそお家で!セルフケアSP」(NHK)では、感染予防のために「舌みがき」を勧めていました。
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●デンタルフロス、歯間ブラシ
歯ブラシだけでは歯と歯の間は6割弱しか汚れが取れません。デンタルフロスや歯間ブラシを使用して、歯と歯の間にいる細菌を減らし、歯肉の炎症を抑えて、細菌が繁殖しにくい歯肉の形態にしていくことも大切となります。
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●歯みがき粉
新型コロナウイルス感染症は、肺炎が一気に重症化して死亡することが多くみられます。これは免疫細胞が過剰に反応して暴走する「サイトカインストーム」という現象が関わっているとされています。
歯周病菌がまき散らす毒物(LPS)は肺炎の原因となりますが、サイトカインストームの防止のためにも、成人は歯周病予防に重点をおいた歯みがき粉がおすすめです。成人の8割が歯周病とされいますので、歯科医院での歯周病予防と治療も同時におこなうようにもしましょう。
2021年3月追記)
多くの歯みがき粉には、汚れを歯につきにくくさせるために「ラウリル硫酸ナトリウム」という成分が入っています。
このラウリル硫酸ナトリウムのほか、テトラデセンスルホン酸ナトリウム、ラウロイルメチルタウリン酸ナトリウムといった歯みがき粉に含まれる成分は、新型コロナウイルスが細胞内に侵入するのを防ぐ可能性があることが、2021年3月に神奈川歯科大学の研究者らによって明らかにされました。
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●うがい薬
重症急性呼吸器症候群(SARS、サーズ)、中東呼吸器症候群(MARS、マーズ)の原因であるサーズコロナウイルス、マーズコロナウイルスなどのコロナウイルスに、ポピドンヨードを使用したうがい薬(イソジン、明治うがい薬ほか)が、効果があることが確認されています。
ブクブクうがいとガラガラうがいをすることで、口とのどの殺菌、消毒をおこなうことができますそのほか、リステリンも効果があるとされています。
2020年8月追記)
ポピドンヨードの新型コロナウイルスに対する効果は、コネチカット大学(米国)、マラヤ大学(マレーシア)などの研究で明らかにされています。
2021年3月追記)
サンスターの調査では、CPC(塩化セチルピリジニウム)が含まれたうがい薬は99.9%の新型コロナウイルスの不活性が認められました。シンガポール国立歯科センターの調査でもCPCの効果が認められました(2020年12月、Infectionに掲載)。CPCが含まれたうがい薬にはGUM、イソジンクリアうがい液、キレイキレイなどがあります。
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●歯科衛生士、歯科医師に相談
歯みがきは簡単そうにみえて、なかなか難しいものです。上手くみがけなかったり、質問があるときはお近くの歯科医院に受診して聞いているのも方法です。お気軽にご相談いただけたらと思います。歯みがきは命に関わる大切な行為です。しっかり歯をみがいていきましょう。