口腔灼熱症候群(バーニングマウス症候群)とは

口腔灼熱症候群(こうくうしゃくねつしょうこうぐん、口腔灼熱痛症候群)とは、口内に灼熱感のある痛みを引きおこす病気です。舌痛症と同様に、50〜70歳代、女性に多くみられます。

日本では一般の人だけでなく、歯科医師、医師などの医療関係者の間でも、ほとんど知られていません。世界的には神経障害性疼痛を原因とする研究論文が増加していますが、原因は不明なことも多く、現在のところ定められた治療方法もありません 。

しかしながら、世界の研究者の間では、2000年以降、口腔灼熱症候群に関して急速に関心が高まっています。口腔灼熱症候群について発表された研究論文は、1981〜1990年は僅か81編でしたが、1991〜2000年は155編、2001〜2010年は398編となり、急増しています。

今後、研究が進み、治療方法も確立されていくことが期待されています。


口腔灼熱症候群について発表された研究論文数
研究論文数
アメリカ国立医学図書館が提供する世界最大の医学研究論文データベース「PubMed(パブメド)」に登録されている口腔灼熱症候群に関する研究論文

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●口腔灼熱症候群の有病率※1、2

有病率は0.7〜15%と報告されていますが、診断基準が統一されていないなどの理由により、かなりばらつきがあります。比較的発症率が高い病気です。

ミシガン大学(アメリカ)の研究者が、45711人を対象におこなった大規模な調査では、0.7%の有病率となりました。トゥルク大学(フィンランド)の研究者が431人を対象におこなった大規模な調査では15%の有病率で、半数が口腔カンジダ症や口の中の粘膜の病気がありました。



●口腔灼熱症候群と舌痛症との違い

口腔灼熱症候群に対する解釈方法はいくつかあり、(1)口腔灼熱症候群の一つに舌痛症があるというという考え、(2)口腔灼熱症候群と舌痛症は別の病気であるという考え、(3)舌痛症という病気はなく、舌の痛みは口腔灼熱症候群含めるという考えがあります。

日本では舌に痛みがある病気を「舌痛症」とするのが多いものの、海外では舌痛症も口腔灼熱症候群の一つの症状とされています。

舌痛症

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口腔灼熱症候群の定義と診断基準

口腔灼熱症候群という名称は1967年に初めて記載され、2018年に発表された国際頭痛分類第3版(ICHD−3)では、下記のように定められています。


1)口腔灼熱症候群の定義
3ヶ月を超えて、かつ1日2時間を超えて連日再発を繰り返す口腔内の灼熱感、あるいは異常感覚で、臨床的に明らかな原因病変を認めないもの。


2)診断基準
A.BおよびCを満たす口腔痛がある。
B.1日2時間を超える痛みを連日繰り返し、3ヶ月を超えて継続する。
C.痛みは以下の特徴の両方を有する 1)灼熱感 2)口腔粘膜の表層に感じる
D.口腔粘膜は外見上正常であり、感覚検査を含めた臨床的診察は正常である。
E.他に最適な国際頭痛分類第3版の診断がない。


3)そのほか
以前に使用されていた用語として口腔痛、舌痛がある。
唾液減少、シェーグレン症候群、扁平苔癬、口腔カンジダ症、糖尿病などを原因として含めるかは議論が分かれている。

上記のほかに、慢性疼痛の国際疾病分類(ICD−11J)、国際口腔顔面痛分類(ICOP)などによる口腔灼熱症候群の定義があります。



口腔灼熱症候群の原因

口腔灼熱症候群は、国際頭分類の定義では明らかな原因となる病気を認めないものとしています。

しかしながら、何らかの病気があって、それを原因として口内に痛みが生じるものも口腔灼熱症候群に含めるという考えもあり、国際頭痛分類では「議論が分かれている」としています。口腔灼熱症候群をおこすことのある病気等には下記があります。


1)全身的な病気
糖尿病甲状腺機能低下症シェーグレン症候群逆流性食道炎/貧血/栄養不足(ビタミンB1、B2、B6、B12、葉酸、亜鉛、鉄など)/更年期/パーキンソン病/脳血管障害/帯状疱疹薬の副作用


2)局所的な病気
ドライマウス口腔カンジダ症口腔扁平苔癬歯ぎしり神経の損傷/口内の汚れ/舌を歯に押し当てたり、唇をかむ習慣/合わないつめ物、入れ歯の使用/歯科材料のアレルギー/口呼吸



口腔灼熱症候群の症状

舌が最も多く、その他には歯肉、口唇、頬の粘膜、口蓋(口の天井)、口底などに痛みがでます。激痛は少なく、ヒリヒリ、チクチクしたり、やけるような痛み、刺すような痛み、しびれ感が多い傾向があります。

口の乾燥(ドライマウス)、喉の渇き、味覚の変化、苦味や金属味を感じたり、痛みが原因で話しにくい、食べにくいこともあります。何かに集中しているときや食事中は症状が軽くなることが多く、痛みは数ヶ月から数年続くことがあり、睡眠障害(不眠症ほか)、うつ病を発症する人もいます。

口の乾燥

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口腔灼熱症候群の治療

治療は舌痛症と同様の方法となります。ドライマウス、口腔カンジダ症など、原因が明らかな場合は、それに対する治療をおこないます。

カウンセリング、抗うつ薬や向精神薬の服用、認知行動療法などによって改善することもあります。治療はごく一部の歯科、口腔外科、心療内科、精神科などでおこなわれます。

治療はどこの専門医療機関でも長期間かかることが多く、短期間にすぐに結果を求めるのではなく、あせらず長い目で根気よく治療を続けていくことが大切です。

ご相談

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※口腔灼熱症候群(舌痛症を含む)の治療を目的として来院される患者様へ
診療時間を十分に確保して診させていただくため、専門の歯科医師が対応させていただくため、お手数ですがご来院前に電話(電話番号:045-910-2277)にてご予約ください。


※1 Lipton JA, Ship JA, Larach-Robinson D.  Estimated prevalence and distribution of reported orofacial pain in the United States.  J Am Dent Assoc. 1993 Oct;124(10):115-21  ※2 Tammiala-Salonen T, Hiidenkari T, Parvinen T.  Burning mouth in a Finnish adult population. Community Dent Oral Epidemiol. 1993 Apr;21(2):67-71.



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口腔灼熱症候群(バーニングマウス症候群) 横浜・中川駅前歯科クリニック