日本老年医学会では、終末期を「病状が不可逆的かつ進行性で、その時代に可能な最善の治療により病状の好転や進行の阻止が期待できなくなり、近い将来の死が不可避となった状態」と定義しています。
終末期は見送るご家族にとっては死を予期でき、大切な人を失うことに対する「心の準備期間」ともいえます。終末期の歯科治療は、患者様本人がその人らしく過ごせるようにするためだけでなく、残されたご家族が「心の準備期間」を納得できるようご支援させていただくことでもあります。
当クリニックでは、医療、介護関係者の方々と連携をとりながら、終末期の方の歯科治療をすすめさせていただいております。ご要望等がありましたら、些細なことでも構いませんのでお気軽にお申し付けください。
●終末期における身体の状況から生じるお口の変化
1)意識障害
脳卒中、認知症、神経難病の進展により生じる意識障害は、入れ歯の使用を困難にしたり、虫歯や歯のとがった部分により、頬や舌の粘膜が傷つき感染の原因となることがあります。
2)栄養障害
口から食べることが困難になったり、消化吸収作用が弱ることにより、経管栄養でも十分な栄養摂取ができないことがあります。脱水による口腔乾燥がおき、口腔乾燥が進むと口内の粘膜が剥がれて強い口臭が発生したり、口腔カンジダ症、会話の妨げになります。
3)循環不全、出血
全身状態の重症化が進み看取りの時期に近づくと、口内の粘膜からの出血が増加します。簡単に出血しやすく、完全に出血を止めることは難しくなります。
●終末期の歯科治療でおこなうこと
1)誤嚥性肺炎の予防
終末期になると免疫力が低下して肺炎をおこしやすくなります。肺炎の多くは口内の細菌が肺に入ってしまうことによっておきる誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)となっています。
誤嚥性肺炎の予防のために歯科医師や歯科衛生士が歯の清掃(口腔ケア)をおこなうことで、口内の細菌数を減らしていきます。
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2)摂食嚥下機能の維持
終末期になると、食べたり、飲み込む機能は衰え、唾液は減少し、口から食べることが困難になることがあります。
本人にとって、食べることは日常生活において一番の楽しみであることが多く、歯科医師、歯科衛生士、管理栄養士が適切な食事を提案させていただくなどして、できる限り口から食べることを支えさせていただきます。
当クリニックでは管理栄養士が在籍し、栄養相談、食事相談をおこなっています。お気軽にご相談ください。
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3)口腔ケア
自身での歯みがきが困難になったり、口を使う機会の減少により口内が汚れます。特に剥がれた上皮(剥離上皮、かさぶた)や乾燥した痰が口内に張り付いていると、本人にとって不快であるだけでなく、強い口臭の原因や会話の妨げにもなります。
歯科医師、歯科衛生士が歯の清掃(口腔ケア)をおこなうことで口内をきれいにし、口臭を防ぎ、会話を手助けし、快適に過ごすお手伝いをさせていただきます。
2020年から歯科衛生士による口内の剥離上被膜(かさぶた)除去が健康保険適応になりました。
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4)ドライマウス(口腔乾燥症)の治療
終末期には必ずといっていいほどドライマスがおきます。水分摂取量の減少、脱水、発熱、口呼吸、口を使う機会の減少、ストレス、薬の副作用、放射線治療による唾液の減少などにより、口が渇きやすくなります。口の渇きは口内の不快症状となるだけでなく、食事や会話が困難になる原因につながります。
水分補給、加湿、保湿のほか、保湿剤や薬の服用により、口の乾きを改善していきます。口腔ケアも有効で、口腔ケア、患者さんの好みに応じた食事、氷を口に含むなどをした患者さんの1/3はのどの渇きを感じず、死亡まで口腔ケアをおこなった全ての患者さんがドライマウスが緩和していたとの研究報告もあります。
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5)口腔カンジダ症の治療
終末期になると免疫力が低下するほか、口内の乾燥(ドライマウス)や汚れのため、口内にカビが繁殖する病気「口腔カンジダ症」を高い頻度で発症します。
カンジダ(カビ)が繁殖すると、口の中がヒリヒリ痛む、食べ物を口にしたときに痛む(接触痛)、食べ物の味を感じにくい(味覚障害)などの症状があらわれます。治療によって口腔カンジダ症を改善、治していきます。
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6)口内炎(口腔粘膜炎)の治療
特にがん終末期になると、抗がん剤の副作用、免疫力の低下、口内の乾燥(ドライマウス)、ステロイド剤の長期使用などによって、口内炎(口腔粘膜炎)ができやすくなります。
この時にできる口内炎は痛みが強く、医療用麻薬の使用により痛みを抑えていくこともあります。歯科医師や歯科衛生士は痛みを軽減するお手伝いをさせていただきます。
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7)入れ歯の調整、作製
終末期となり、体重が減少し、やせていくのに伴い、歯肉もやせていきます。合わなくなった入れ歯を調整したり、新しく入れ歯を作製することにより、できる限り口から食べれられるようにお手伝いをさせていただきます。
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終末期の歯科治療をおこなう場所
終末期であっても、歯科医院に通院される患者様は多くいます。ご家族やヘルパーの方の付き添いのもと来院され、歯科治療をおこなっています。亡くなられる1週間前、2週間前まで通院され、私たちスタッフと笑顔で楽しそうにお話をされている患者様もおります。
一方で、終末期になると、歯科医院に通院が困難になる患者様もいます。そのような患者様はご自宅、施設、病院にお伺いして歯科治療をおこなっております。この様な歯科治療を訪問歯科診療といい、健康保険(医療保険)や介護保険が適応になりますので、お気軽にご相談いただけたらと思います。
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