●口腔カンジダ症とは
口腔カンジダ症はカンジダという細菌によって口の中に引きおこされる感染症です。カンジダは成人の40〜50%にいるとされ、多くの人の口の中にいる細菌です。
通常は口腔カンジダ症を発症することはありませんが、発症すると痛み、口臭、味覚障害などの症状があらわれたり、放置すると食道カンジダ症や肺炎(誤嚥性肺炎)による深部真菌症を引きおこすことがあります。
WHO(世界保健機関)は一部の口腔カンジダ症ががんになるとしています。患者数は増加傾向にあります。
カンジダ(カンジダ・アルビカンス)
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●口腔カンジダ症の発症機序
口の中の粘膜にカンジダが着き(1次付着、2次付着)、増殖して、粘膜の下に入りこむことで、口腔カンジダ症を発症します。
1)1次付着
カンジダと粘膜が、物質の間で働く弱い分子間力(ファンデルワース力)により付着します。付着する力は弱く、うがいや唾液によって簡単にカンジダは粘膜から離れます。治療の必要はありません。
2)2次付着
1次付着が続くと、カンジダと粘膜の間を唾液や血液のタンパク質によって2次付着がおきます。付着する力は1次付着よりも強くなり、カンジダを除去しにくくなります。
3)粘膜下への侵入
2次付着が続くと、カンジダは菌糸を伸ばして強固に粘膜と付着します。菌糸は細胞と細胞の間から体内に入っていきます。付着力はとても強く、薬を使用しないとカンジダは除去できません。治療が必要になります。
口腔カンジダ症の発症機序
●口腔カンジダ症の原因※1
喘息による吸入ステロイド薬の使用、がん治療による抗がん剤や放射線治療、糖尿病、妊娠、高齢、寝たきりなどで体力や抵抗力(免疫力)が落ちているときに発症します。HIV(エイズウイルス)感染者では、初期にあらわれる症状として重要な決め手となります。
病気で抗生物質を長期服用しているときにも発症することがあります。抗生物質の作用によって他の細菌がいなくなり、細菌がいなくなった部位にカンジダが繁殖することがあります。
歯に歯垢(しこう)や歯石が付着して口の中が汚れていたり、ドライマウス(口腔乾燥症)、入れ歯を使用している人も発症しやすい傾向にあります。
国内の大学医学部がおこなった調査では、口腔カンジダ症の原因の62%がドライマウス、抗がん剤や放射線治療が16%、入れ歯が7%、ステロイド剤の使用が4%、抗生物質が2%、糖尿病が2%でした。
当クリニックの経験(これまでに1000人以上の患者様が来院)では、ドライマウス(口腔乾燥症)、ステロイド(喘息や口内炎の薬など)、清掃不十分な入れ歯、免疫低下(睡眠不足、ダイエット、がんなど)、性的接触後が多い傾向にあります。
口腔カンジダ症の原因
体力低下/睡眠不足/免疫低下/ダイエット/高齢者/清掃が不十分な入れ歯/口内の汚れ/食べる、飲み込む機能の低下(摂食嚥下障害)/ドライマウス/喘息(吸入ステロイドの使用)/慢性閉塞性肺疾患(同)/口内炎(ステロイド軟膏の使用)/がん治療(放射線治療、抗がん剤、免疫低下)/糖尿病/人工透析/逆流性食道炎/鉄欠乏性貧血/自己免疫疾患(シェーグレン症候群ほか)/HIV/性的接触後/鉄欠乏性貧血(プランマー・ビンソン症候群)/悪性貧血(ハンター舌炎)/抗生物質や免疫抑制剤の長期服用 ほか
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●口腔カンジダ症の原因菌※1
口腔カンジダ症の原因菌で最も多いのはカンジダ・アルビカンス(C.albicans)となっています。そのほかにカンジダ・グラブラータ(C.glabrata)、カンジダ・クルセイ(C.krusei)、カンジダ・パラトロピカリス(C.paratropicalis)、カンジダ・トロピカリス(C.tropicalis)などが原因菌となっています。
●口腔カンジダ症の症状
口腔カンジダ症を発症すると多くは舌に、その他の部位では頬(ほお)の内側、口蓋(口の天井)、歯肉に白い膜ができます。ガーゼや歯ブラシでこすっても、なかなか取れないこともあります。
口の中がヒリヒリ痛む、灼熱感(口腔灼熱症候群)、食べ物を口にしたときに痛む(接触痛)、舌が痛い(舌痛症)、食べ物の味を感じにくい(味覚障害)などの症状があります。摂食障害によって低栄養、脱水となることもあります。
カンジダは血小板と同じくらいの大きさ(3μm)であるため、血管内に侵入すると全身に広がり、さらにその先で繁殖していくこともあります。そして重篤な病気となることがあります。
舌痛症、味覚障害、ドライマウスを併発することが多い傾向にあります。国内の歯科大学の研究者の調査では、大学病院で口腔カンジダ症と診断された患者さんを調べたところ、48%が舌痛症、14%が味覚異常、11%がドライマウスを主訴として来院していました。
主な症状
痛み/灼けるような痛み(灼熱感)/ヒリヒリする/ピリピリする/口の中が乾く(乾燥感)/舌が乾く/口の中が苦い、しょっぱい(味覚障害)/口の中がザラザラする(粗造感)/舌がザラザラする/舌が厚ぼったい/食べ物が飲みこみにくい(嚥下障害)/しわがれ声(嗄声、させい)/口臭
口腔カンジダ症とドライマウス、舌痛症、味覚障害は互いに関与
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●口腔カンジダ症の分類
口腔カンジダ症には、口の中に白い膜ができるもの、粘膜が赤くなるものなどがあります。
1)白いカンジダ症
多くは偽膜性カンジダ症で、舌や頬の内側、口蓋、歯肉に斑点状の白い膜ができます。白い膜が剥がれると、その下の粘膜は赤くなり、出血することもあります。
自覚症状は少なく、舌のザラザラ感などの違和感を生じることが多い傾向にあります。痛みがないことが多いものの、舌や頬の粘膜がズキズキ痛んだり、痛みが強く食事がしにくくなることもあります。
そのままにしておくと、口全体に広がることもあります。薬(抗真菌薬)による治療が有効です。
2)赤いカンジダ症
紅斑性カンジダ症、萎縮性カンジダ症、義歯性カンジダ症ともいいます。見た目で分からないことも多く、粘膜が赤くなり痛みや灼熱感が強くなります。しびれ感や味覚異常を伴うこともあります。全身状態に問題のない場合は、入れ歯、ドライマウスが関与すること多い傾向があります。
入れ歯の下の粘膜に生じることが多く、この場合は義歯性口内炎とも呼ばれます。下あごよりも上あごの入れ歯のほうが、部分入れ歯よりも総入れ歯のほうが、特に口蓋(口の天井)を覆う入れ歯はカンジダが定着しやすい傾向にあります。
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3)肥厚性カンジダ症
偽膜性カンジダ症(白いカンジダ症)から移行したものが多く、白い膜は厚く、硬くなります。できものやコブのような形になることもあり、がんと見分けるために組織を切り取り検査をおこなうこともあります。
肥厚性カンジダ症患者の15%に組織の異常がみられ、さらにその10%に口腔がんが発症したとの研究報告もあり、WHO(世界保健機関)はがんを発症させることのある病気(口腔潜在的悪性疾患)の一つとしています。
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口腔カンジダ症は口内が白くなったものだけでなく、赤くなったもの、見た目ではわからないものも多くあります。見た目で分かる口腔カンジダ症は3割以下だったという研究報告もあります。
舌のカンジダ症 口蓋のカンジダ症
●口腔カンジダ症の検査 当クリニック取り扱い(培養検査)
見た目で診断が可能なこともありますが、綿棒で舌や頬の粘膜をこすりつけて検体を採取します。検体を培養して、数日後にカンジダがいるかを判定します。これを培養検査といい、痛みもなく、簡単にできます。
そのほかには顕微鏡で観察する顕微鏡検査、組織を取る生検(生体検査)があります。赤い口腔カンジダ症(萎縮性カンジダ症)の場合は、見た目、培養検査、顕微鏡検査ではわからないことが多い傾向にあります。
WHOが定める口腔潜在的悪性疾患の一つである白板症や板症、口腔がんとの鑑別が必要なこともあります。
カンジダ菌検査
患者様本人の確認が取れないため、個人情報保護法、守秘義務(刑法第134条)の点から、電話で検査結果をお知らせすることはできません。検査をお受けになられる場合は、予めご了承ください。
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●口腔カンジダ症の治療
カンジダが口の中にいても症状がなければ、多くの場合において治療の必要はありません。症状がある場合は治療の対象となります。多くは1〜2ヶ月で治りますが、治療が長引いたり、再発することもあります。
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※1 山本哲也 口腔カンジダ症の病態とその制御 臨床病理58(10)1027−1034 2010
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