味覚障害について
●味覚障害とは

味は食物が味蕾(みらい)という器官に接触して、そこで受けた刺激が脳に伝えられることによって感じます。ところが最近、味を感じる舌の機能低下により、「食物の味がわからない」という味覚障害の人が増加しています。

味覚障害の多くは味蕾の異常によりおこり、全く味がしない、味が弱く薄く感じる、特定の味がわからない、苦味や渋みがする、本来の味とは違う味に感じるなど様々な症状があります。

味蕾の構造 味蕾の構造

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●味覚障害の患者像

味覚障害の患者数は、1990年では14万人でしたが、人口の高齢化、食生活の問題、味覚障害への関心度の高まりから2019年には27万人と約2倍に増加しています。

この調査は主に耳鼻咽喉科を対象としており、調査対象外の歯科、口腔外科、内科に受診する人も多く、また味覚障害に気付いていない人も多いことから、実際には数倍の患者数がいると考えられています。

性別では女性、年齢では50〜70歳代に多く、40歳以下は少ない傾向にあります。


味覚障害の患者数
味覚障害の患者数
資料:日本口腔・咽頭科学会調べ


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●味覚障害の原因

味覚障害の原因で最も多いのは亜鉛の欠乏です。無理なダイエットや偏食、薬による影響、全身の病気、ドライマウスなど口の中の病気が原因となっておきます。


味覚障害の原因 味覚障害の原因
資料:日本口腔・咽頭科学会調べ(一部改変)



1.亜鉛の欠乏によるも

亜鉛は
味覚にとって欠かせない栄養素の一つです。ところが、私たちが利用する多くの加工食品には添加物が含まれ、一部の食品添加物は亜鉛の体内吸収を妨げる作用があります。

コンビニエンスストアやスーパーで売られている惣菜や弁当などの加工食品に頼りがちな食生活であると、亜鉛が不足して、味覚障害がおきることがあります。また、激辛食品の過度の摂取は、味を感じる器官「味蕾」の機能を低下させたり、破壊する危険性があります。

無理なダイエットなど、過度に偏った食生活や過度に栄養不足の食生活を送ると、亜鉛が不足して、味覚障害がおきることがあります。食事食事の内容に問題がある場合は、食事内容を見直してみましょう。


味覚障害に関して注意が必要な食品添加物
グルタミン酸ナトリウム(調味料)/フィチン酸(変色、酸化防止剤)/ポリリン酸(弾力剤)/カルボキシメチルセルロース(増粘剤)/リン酸塩(品質改良剤)/ED
TA(酸化防止剤) ほか

一人で食事している方は注意しましょう
一人暮らしの高齢者や学生、単身赴任中の人などは、一人で食事をすることが多くなります。気付かない間に栄養が偏ってしまったり、他の人が感じる味と自分の感じる味を比べる機会があまりないために、味覚の変化に気付かないまま悪化してしまうこともあります。

コンビニ弁当

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2.薬の影響によるもの
血圧を下げる薬、糖尿病の薬、リウマチの薬、睡眠薬、抗生物質などの薬は、体内での亜鉛の吸収を妨げ、味覚障害がおきることがあります。日本で使用されている2000以上の医薬品が味覚障害をおこすことがあります。


味覚障害の原因となる薬剤
降圧剤/鎮痛剤/抗アレルギー剤/血管拡張薬/抗精神病薬/痛風治療薬/抗生物質/高脂血漿薬/抗パーキンソン病薬/抗ウイルス薬/抗真菌薬/抗悪性腫瘍薬(抗がん剤)/睡眠薬/肝治療薬/インターフェロン ほか

薬

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3.全身の病気によるもの

慢性腎臓病、肝臓病、胃腸障害、貧血、糖尿病、がん、神経麻痺、中耳炎などによって、味覚障害がおきることがあります。


1)腎臓病(腎不全、人工透析)
腎障害でみられるタンパク尿により亜鉛の排泄量が増加することがあります。また、腎障害によるドライマウス、味覚に関与する細胞の委縮により味が変化することがあります。

2)高血圧
食塩の過剰摂取が高血圧の原因になっていることもあり、塩味を感じにくくなることがあります。

3)肝臓病
肝炎、肝硬変では亜鉛の排泄量が増加したり、亜鉛の体内への吸収が低下することがあります。

4)糖尿病
糖尿病の合併症状として神経障害があり、味覚に関与する神経も障害をきたすことがあります。

5)がん
顔面のがんでは放射線治療、切除療法に伴い味覚に関する神経が障害を受けることがあります。胃がんでは胃切除にビタミンB12、鉄が不足、舌の粘膜障害により味覚障害がおきることがあります。抗がん剤の副作用として、高い頻度で味覚障害があらわれます。

6)胃食道逆流症(逆流性食道炎)
胃酸が逆流することにより口内が酸性になり、味覚が変化することがあります。

7)潰瘍性大腸炎 クローン病
亜鉛、鉄などの微量元素やビタミンの多くは腸で吸収されるため、炎症性の腸の病気では亜鉛不足になり味覚障害を発症することがあります。

8)神経麻痺
帯状疱疹、顔面神経麻痺により、味覚に関与する神経が障害を受けることがあります。

9)シェーグレン症候群
唾液が減少することにより、味が感じにくくなります。

10)貧血
偏食、ダイエット、妊娠、授乳などによる鉄(プランマー・ビンソン症候群)、ビタミンB12(巨赤芽球性貧血)、葉酸(同)の欠乏から引きおこされる舌炎により、貧血の症状よりも先に味覚障害を発症することがあります。

11)脳血管障害(脳卒中) 脳腫瘍
最初の症状として味覚の異常がおきることがあります。

12)重症筋無力症
甘味が感じにくくなります。味覚治療をきっかけに、重症筋無力症とわかることもあります。咀嚼、摂食嚥下障害(咬み込み、飲み込みの障害)がおきることもあります。

13)クロンカイト・カナダ症候群
腸に多数のポリープができる病気で8割に味覚障害がみられ、味覚治療をきっかけに病気がみつかることがあります。

14)そのほか
甲状腺機能低下症認知症てんかん、頭部の外傷、精神的な病気(うつ病統合失調症ほか) ほか



4.口の中が原因のもの

舌の病気、重度の歯周病、入れ歯の使用、ドライマウス、舌のみがき過ぎなどによって、味覚障害がおきることがあります。

1)歯周病
重度の歯周病になると、気付かなくても歯肉から膿や血が出ます。その結果、口の中に苦みを感じたり、鉄の味を感じることがあります。

2)入れ歯
入れ歯の違和感、清掃不良、温度感覚や触感の低下から味覚障害がおきることがあります。

3)ドライマウス(口腔乾燥症)
唾液は味物質を舌に運ぶ役割をしています。ドライマウスを発症して唾液が減少すると、味覚障害がおきることがあります。

4)舌炎 舌がん 舌のみがき過ぎ
舌の表面には味を感じる器官(味蕾)があります。舌炎、舌がん、舌のみがき過ぎにより味蕾が破壊され、味覚障害がおきることがあります。

5)口腔カンジダ症
かびの一種「カンジダ」により、何も食べていないのに苦味や塩味を感じることがあります。

6)ガルバニー電流
種類の異なる銀歯でかみあうことにより、金属味がすることもあります。 

7)火傷(やけど)
ほとんどは数日から2週間ほどで治ります。

8)そのほか
酸蝕症(酸蝕歯)舌痛症口内炎 ほか

舌



5.
風味障害
味覚障害だと思って医療機関に受診したものの、実は嗅覚に異常があるケース。


6.手術後
中耳炎の手術、口蓋扁桃摘出手術(扁桃腺の手術)、下あごの親知らずの抜歯インプラント手術により味覚の神経を傷め、味覚障害がおきることがあります。


8.その他

喫煙、原因不明だが亜鉛が欠乏している可能性の高いものなど。





味覚障害の治療を希望される方は、お手数ですが事前にご予約ください(電話番号:045-910-2277)。また、お口の状態等によっては、初診日にろ紙ディスク法などの味覚検査をおこなわないこともあります。予めご了承ください。


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