●摂食嚥下障害とは
「摂食(せっしょく)」とは水分や食物を口に取り込む(食べる)こと、「嚥下(えんげ)」とは取り込んだ水分や食べ物を咽頭、食道を経て胃へ送り込む(飲み込む)ことをいいます。この機能の障害を「摂食嚥下障害」といいます。
摂食嚥下障害は本人が気付いていないこともよくあります
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●食べ物がかみにくい、飲み込みにくい人の割合
2022年に厚生労働省がおこなった調査によると、かめないものがある人は7.2%、飲み込みにくい人は1.4%でした。60歳以上に増加しする傾向がみられました。
かみにくい、飲み込みにくい人の割合
資料:令和4年歯科疾患実態調査(厚生労働省)
●摂食嚥下のメカニズムと問題
摂食嚥下は、先行期、準備期、口腔期、咽頭期、食道期の5つに分けられます。摂食嚥下障害があると、様々な問題がおきます。
1)先行期(認知期)
何をどのうように食べるかを判断する時期。
問題:食べ始められない、食べ続けられない、食べ方を誤る
2)準備期
食べ物をかみ、食塊を形成する時期。
問題:食べこぼす、吐き出してしまう
3)口腔期
食塊を口の中からのど(咽頭)に送り込む時期。
問題:咬めない、ため込んでしまう、むせる
4)咽頭期
食塊をのどから食道に送り込む時期。
問題:むせる、誤嚥(誤嚥性肺炎)
5)食道期
食塊を食道から胃に送り込む時期。
問題:食物の通過が悪い、逆流する(逆流性食道炎)
摂食嚥下メカニズム
食塊:咬み砕いた食べ物を、飲み込みやすいように口の中でもう一度丸めて塊にする作業のことをいいます。
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●摂食嚥下障害の原因
摂食嚥下障害の原因はさまざまですが、脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)が最も大きな原因で40%を占めるとされています。
そのほか、認知症、パーキンソン病、うつ病、入れ歯の不具合や未使用、ドライマウス、舌炎、薬の副作用等によっても摂食嚥下障害がおきることがあります。
摂食嚥下障害の原因となる病気など
脳卒中/認知症/パーキンソン病/脳性麻痺/筋ジストロフィー/筋委縮性側索硬化症(ALS)/プランマー・ビンソン症候群/重症筋無力症/多発性筋炎・皮膚筋炎/口腔がん/咽頭がん/食道がん/胃がん/大腸がん/潰瘍性大腸炎/クローン病/口蓋裂/うつ病/統合失調症/摂食障害/加齢/ドライマウス/合わない入れ歯の使用/虫歯の放置/薬の服用
●摂食嚥下障害の検査
摂食嚥下障害の検査には様々なものがあります。当クリニックでは簡単な検査(スクリーニングテスト)のみをおこなっています。検査によってどこの機能に問題かが分かり、問題となる機能を摂食嚥下訓練により維持、改善していきます。
1)簡単な検査(スクリーニングテスト) ※当クリニックで実施しています。
舌圧測定
舌圧測定器を使用して舌の機能を測定します。舌の機能低下がみられる人ほど、摂食嚥下障害をおこしやすく、舌の訓練が必要となります。2018年に舌圧測定が健康保険適応になりました。
舌圧測定器
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反復唾液嚥下テスト(RSST)
30秒間で唾液を何回飲めるかを計測します。3回未満ですと、摂食嚥下障害の可能性が高くなります。
改定水飲みテスト(MWST)
3mlの冷水を飲んでもらう試験です。むせや呼吸の変化、声の変化などをみます。咽頭期の障害がわかります。
フードテスト(FT)
茶さじ1杯(4g)のプリン、おかゆ、液状の食品を食べていただき、飲み込んだ後に口の中に食物が残っていないか、むせないか、呼吸の変化などをみます。
咳テスト
不顕性誤嚥(むせのない誤嚥)が疑われるときにおこないます。
ガムテスト
ガムを咬んでいただき、咬む能力(咀嚼能力)を判定します。
頸部聴診法
食べ物を飲み込んだときに首のあたりで生じる音(嚥下音)や飲み込む前後の呼吸音の変化を聴診器で聴診します。
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2)精密検査
嚥下内視鏡検査(VE) ※当クリニックで実施しています。
鼻から内視鏡を入れて、食物を口から食べ、食物を咬み、飲み込むまでの様子を観察します。
内視鏡を鼻から通す不快感はあり、飲み込む瞬間を観察できない、準備期が観察できないといった欠点はありますが、造影検査よりも手軽に、簡単に検査をおこなうことができます。
内視鏡
関連するページ 嚥下内視鏡検査(VE)
嚥下造影検査(VF) ※当クリニックでは実施していません。
レントゲンを撮りながら、造影剤の入った食品を食べます。口への取り込みから食道を通過するまでの、摂食嚥下の一連の動きを観察することができます。歯科大学病院など、摂食嚥下のリハビリをおこなっている医療機関等で検査をおこなっています。
●摂食嚥下障害の対処方法
摂食嚥下障害があるときは、食事や食事内容の工夫、歯科医師の指導の下でおこなう訓練、口腔ケアなどによって改善されます。合わない入れ歯、虫歯があれば、まずはこれらの歯科治療から始めます。
1)食事の時間
体調のよい時間に食事を摂る、食事中にだんだん摂取ペースが落ちてくるときは、1回の食事時間を短くするなどの工夫をします。
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2)食事の内容
食事の味付け、温度を工夫したり、きざみ食や増粘剤を使用するなどして、飲み込みやすくします。
調理方法の工夫により、飲み込みやすくなります
当クリニックでは管理栄養士が在籍し、摂食嚥下障害の方の栄養相談、食事相談をおこなっています。お気軽にご相談ください。
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3)摂食嚥下訓練
口唇、頬のマッサージや訓練、嚥下体操、ストローやメディカルパタカラを使用した訓練をおこないます。
メディカルパタカラを使用した摂食嚥下訓練は健康保険が適応になります
関連するページ 摂食嚥下訓練 メディカルパタカラ
4)口腔ケア
歯科医師や歯科衛生士がおこなう口腔ケアは、口の中をきれいにして食事をしやすくします。また、口の中を刺激する作用もあり、嚥下機能が改善されたり、傾眠傾向のある方は口腔ケアによって目覚めます。
ご自宅や施設にお伺いして口腔ケアをおこなうこともできます
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5)ドライマウス(口腔乾燥症)への対応
食事前に十分な水分摂取をしたり、唾液腺のマッサージ、唾液を出しやすくする薬を服用します。
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6)歯科治療
歯の痛み、入れ歯の不使用、合わない入れ歯の使用では、咬むことはできません。認知症の方は、痛みなどの歯科症状を訴えないことがあり、「食べるのが遅くなった」、「食事の量が減った」という背景に口の中に問題があることが多くあります。
お気軽にご相談ください
口腔ケア、摂食嚥下訓練等について、詳しくは訪問歯科診療の際に、あるいは当クリニック外来にてお問い合わせ下さい。担当の歯科医師がご説明させていただきます。また、ご希望があれば口腔ケア、摂食嚥下訓練等をさせていただきます。
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