子供の睡眠時無呼吸症候群 横浜・中川駅前歯科クリニック
子供の睡眠時無呼吸症候群
通常、子供はいびきをかきません。もしも子供が常にいびきをかいていているようでしたら、何らかの原因で気道が狭くなっていることがあります。

特に日中に眠気があったり、落ち着きがなかったり、集中力がない場合は、いびきよって睡眠不足に陥っている可能性があります。「寝る子は育つ」といいますが、子供にとって睡眠は心身の成長に欠かせないものですので注意が必要です。



子供の睡眠時無呼吸症候群の発症頻度※1

発症頻度については、日本ではほとんど調査されていませんが、千葉県でおこなわれた大規模調査では、
いびきは39%睡眠中の呼吸停止は4%の小児にみられました。

海外では
小児の睡眠時無呼吸症候群の発症率は1〜4%と報告されています。

成人は男性が多いのに対し、子供は男女差はなく、肥満の関与も少ない傾向がみられます。また、6歳まで子供は季節変動があり、風邪や鼻づまりをおこしやすい冬季は受診者が多く、夏季は受診者が少ない傾向があります。

睡眠 子供の睡眠時無呼吸症候群

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子供の睡眠時無呼吸症候群の原因

アデノイド(咽頭扁桃)肥大、口蓋扁桃(扁桃)肥大によるものがほとんどです。アデノイド、口蓋扁桃肥大により気道が狭くなり、いびきをかいたり、睡眠時無呼吸症候群を引きおこします。鼻づまりも症状を悪化させます。

その他では、歯並び、肥満、大きな舌、低舌圧は気道を狭め、睡眠時無呼吸症候群を発症させる一因となります。


睡眠時無呼吸症候群の原因
アデノイド肥大/口蓋扁桃肥大/鼻閉(鼻づまり)/副鼻腔炎/大きな舌/低舌圧/肥満/下顎が引っ込んでいる(下顎後退)/下顎が小さい(小下顎)/アレルギー性鼻炎/かみ合わせが深い(過蓋咬合)/出っ歯(上顎前突)/開口/食生活/口呼吸

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  舌圧測定  かむ回数が増える食事



睡眠時無呼吸症候群を引きおこすことのある先天性の病気

ダウン症候群は小さな上あご、大きな舌、肥満により、ピエール・ロバン症候群やトリチャー・コリンズ症候群は小さな下あごを原因として睡眠時無呼吸症候群を発症することがあります。

そのほか、てんかん、甲状腺機能低下症なども睡眠時無呼吸症候群を発症しやすい傾向があります。


睡眠時無呼吸症候群を引きおこすことのある先天性の病気
てんかん脳性麻痺/筋ジストロフィー/キアリ奇形/水頭症/ダウン症候群/ピエール・ロバン症候群/アペール症候群/ターナー症候群/トリチャー・コリンズ症候群/マルファン症候群/プラダー・ウィリ症候群/クルーゾン症候群/甲状腺機能低下症

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●子供の睡眠時無呼吸症候群の症状

睡眠時に無呼吸や低呼吸が何度もおきるため、脳が何度も目覚めてしまいます。その結果、質の低い睡眠となり、睡眠不足から
集中力低下、落ち着きのなさ、学習能力の低下などが認められることがあります。

また、成長ホルモンは睡眠が深くなったときに分泌されますが、いびきによって成長ホルモンの分泌低下がおこり、成長が遅れることがあります。



起きているときの症状
眠気/いねむり/落ち着きのなさ/集中力の欠如/学習障害/学力低下/事故/口呼吸/指しゃぶり/言語発達不良/眠気を払うための異常行動/
感情障害

寝ているときの症状

いびき/途中でよく目が覚める/よく動く/汗を多くかく/夜尿/悪夢/咳をする

長期的な影響
成長障害/精神発達障害/多血症/高血圧/肺性心
/潜在能力の埋没

学習 症状の一つとして学習障害がおきることもあります

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●子供の睡眠時無呼吸症候群と歯並び

歯並びが原因で発症することがあります。子供の睡眠時無呼吸症候群は歯並びを悪化させ、顔面の成長発育を抑え、大人になってからの睡眠時無呼吸症候群の発症要因にもなります。

下あごの後退、下あごが小さい(小下顎症)、かみ合わせが深い症状(過蓋咬合)がみられると、口の中の容積が小さくなり、舌は後ろ(喉の方向)に押し出されやすくなります。その結果、気道は狭まり、睡眠時無呼吸症候群の発症要因となります。

また、出っ歯(上顎前突)、かみ合わせた時に前歯に隙間がある症状(開咬)がみられると、口は閉じにくくなり、口を開けたままでいることが多くなります。口を開けたまま寝てしまうと、重力の作用で下あごは後退し、舌は後ろ(喉の方向)に押し出されやすくなります。結果として、気道は狭まり、睡眠時無呼吸症候群の発症要因となります。

子供が睡眠時無呼吸症候群を発症すると、5〜25%に発育障害がおきるとされています。※2また、睡眠時無呼吸症候群を発症すると、下あごの発育障害がおき、それが睡眠時無呼吸症候群の症状を悪化させるという悪循環がおきることがあります。

歯並び 歯並びも関わりがあります



子供の睡眠時無呼吸症候群の治療法

治療では主にアデノイド切除、扁桃摘出による手術をおこないます。症状に応じて、鼻にマスクをつける方法(CPAP)、矯正治療、減量等の治療もおこなわれます。

子供の睡眠時無呼吸症候群の治療法


1)アデノイド切除、口蓋扁桃摘出術※3
アデノイド肥大は4〜6歳、口蓋扁桃肥大は、6〜8歳をピークとして自然に症状が改善するケースがみられます。ただし、いびきの程度がひどい場合などは、アデノイド切除、口蓋扁桃摘出術の対象となります。

合併症のないときでの手術による改善率は、80〜85%とされています。2歳以上(体重15kg以上)に対して手術がおこなわれることが多く、4〜6歳での手術が最も多い傾向にあります。

7〜9歳での改善率は60〜70%とされ、年齢が上がるにつれて顔面形態の変化、肥満の影響を受けるため、改善率は低下する傾向にあります。特に肥満を合併しているときの改善率は25〜40%とされており、減量をおこなってから手術が必要となります。

アデノイド・口蓋扁桃

関連するページ  小児の睡眠時無呼吸症候群 Q&A  小児のアデノイド・扁桃摘出術


2)CPAP(持続的陽圧呼吸装置、しーぱっぷ)
通常大人が使用しますが、まれに子供にも使用されます。鼻にマスクを装着して加圧した空気を気道に送り込むことにより、気道の閉塞を防ぎます。慣れるまでに時間がかかることもありますが、家庭でも簡単に使用でき、効果の高い方法です。


関連するページ  CPAPについて


3)矯正治療
下あごが小さい(小下顎)など、あごや歯並びに問題のある場合は、子供の時期に矯正治療をおこないます。主に「床矯正(しょうきょうせい)装置」と呼ばれる装置を使用して、下あごを大きくします

下あごを大きくするのは、成長の止まった大人では難しく、成長期の子供、主に5〜10歳頃が対象となります。子供の時期の矯正治療は、大人になってからの睡眠時無呼吸症候群の発症予防にもつながります。

睡眠時無呼吸症候群の発見者であるクリスチャン・ギルミノー博士は、生前に小児期の矯正治療の大切さを盛んに訴えていました。

クリスチャン・ギルミノー博士 クリスチャン・ギルミノー博士(NHKスペシャル 病の起源)

関連するページ  睡眠時無呼吸症候群の新しい治療  矯正歯科・歯並び  床矯正


4)口呼吸(口唇閉鎖不全症)の改善
現代は軟らかい食べ物が増えた結果、かむ回数が昔に比べると少なくなりました。かまない食事は、あごの発育を悪くしたり、口呼吸を促し、睡眠時無呼吸症候群の発症要因となります。

子供の頃からかむ回数が増える食事を取り入れて、口呼吸を促していきます。また、必要に応じて、パタカラ、あいうべ体操などのトレーニングをおこないます。

口呼吸の改善 NHKニュース・おはよう日本でも紹介されました

関連するページ  口唇閉鎖不全症(お口ポカン)  保健教材ニュース(あいうべ体操)


5)鼻づまりの治療
鼻づまり(鼻閉)によって、睡眠中の無呼吸や低呼吸が増加することがあることがあります。鼻づまりを改善するために、抗アレルギー剤、抗ロイコトリエン剤、粘液調節剤、点鼻ステロイド剤なとが治療に使用されます。

口呼吸や鼻づまりが長期間続くと、小下顎、面長な顔、口をぽかんと開いている「アデノイド顔貌」という特徴的な顔になり、大人になってからの睡眠時無呼吸症候群の発症要因になります。


6)減量
9歳以上では、肥満が関与する睡眠時無呼吸症候群がみられ、年齢とともにその頻度が増加します。年々共働きの家庭が増え、食生活の変化により、肥満が関与する例は多くあります。カロリー制限や運動療法による体重減少によって、症状が改善することもあります。

関連するページ  肥満といびき


7)その他
睡眠環境の改善、睡眠時の体位の工夫などによって改善することもあります。

子供の睡眠 睡眠環境を改善することで、無呼吸の症状が改善されることもあります

関連するページ  いびきと睡眠時無呼吸症候群のセルフケア



子供のいびき、睡眠時無呼吸症候群の診療科

子供の睡眠時無呼吸症候群は、日本ではまだまだ知られていません。検査、治療をおこなっている医療機関も限られています。

アデノイド肥大と口蓋扁桃肥大が多いため、これらが原因として考えられるのであれば、耳鼻咽喉科や小児科での治療となります。歯並びや口呼吸が原因であれば、歯科、矯正歯科での治療となります。

そのほか症状に応じて内科、循環器科、循環器内科、呼吸器科、呼吸器内科等での治療となります。

診察 お気軽にご相談ください

小児の睡眠時無呼吸症候群については対応している医療機関が極めて少なく、いくつもの医療機関を受診された末に当クリニックに来院される患者様が殆どです。医療機関がお分かりにならない場合は、症状を診させていただいた後に、当クリニックにて治療、あるいは最も適当と思われる医療機関をご紹介させていただくことも可能です。



子供の睡眠時無呼吸症候群の治療例

1.10歳男児(当院に来院した患者様)

来院時)
4歳の時にアデノイド切除をおこなったものの、再びいびき、無呼吸を発症。いくつもの医療機関を受診しましたが、問題ない、様子を見ましょうとのことで治療はおこなわれませんでした。当クリニックで診させていただき、適切な病院を紹介。

検査結果)
病院にて検査。睡眠中に1時間に65回も無呼吸と低呼吸がおき、最長で81秒間も呼吸が止まっていました。重症の睡眠時無呼吸症候群、むずむず脚症候群、アデノイド再増殖と診断。

経過)
病院に1週間ほど入院して、全身麻酔をおこない手術(アデノイド切除術)。手術後はいびきや無呼吸もなくなり、熟睡できるようになりました。

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2.4歳男児(ある大学病院に来院した患者様)

来院時)
睡眠中のいびき、無呼吸、鼻閉を訴えて来院。無呼吸は2歳頃から発現。

検査結果)
睡眠時無呼吸症候群。アデノイド増殖。

経過)
手術せず。寝室を湿った畳敷きの部屋から南向きのフローリングの部屋に変更。鼻のアレルギー症状がなくなり、鼻閉が改善。無呼吸の症状もなくなりました。



※1 Rosen,C.L.:Pediatr.Clin.N.Am,51,2004 第15回日本睡眠歯科学会学術集会での発表ほか  ※2 Gozal D,et al:Snoring and obstructive sleep apnea in children:why should we treat?Paediatr Respir Rev,5,2004  ※3 Clinical practice guideline : diagnosis and management of childhood obstructive sleep apnea syndrome. pediatrics 109,2002 etc.



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